スイス各地の日本人の方の声(野嶋篤さん/アルトドルフ在住)

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カントンURIのアルトドルフで、日本語新聞「グリエッツィ」を発行する野嶋篤さんより現在の様子をお知らせ頂きました。ご一読ください。


2020年3月24日

連邦政府は2月28日、コロナウイルス対策として1,000人以上のイベント禁止対策を発表をした。
 この影響で、3月2日〜5日に予定されていたバーゼルのファスナハトやジュネーヴの自動車メッセ(3月5日〜15日)、アイスホッケーやサッカーの試合などが中止されたり、無観客試合になるなど、社会的に激震が走った。
 この時点の新型コロナウイルス感染者の数はわずかに22名(連邦内務省厚生局統計)で、私は対岸の火事程度にしか受け止めていなかった。日常生活で、あまり注意することをしないまま、時間が過ぎた。
連邦政府は、3月13日(金)には学校閉鎖(4月19日まで)を決定。そして、100名を越えるイベントが4月30日まで禁止となった。

 実は、この時点でも、まだまだ高をくくっていた私は、電車で平気で移動し、インタビューに出かけ、友人と会い、レストランやカフェに出入りする生活を続けていた。

 スイス・アジサイの会がオーガナイズ・企画していた半減期映画会が3月15日に開催される予定だった。新型コロナウイルスの広がりを考え、止むなく延期を決定した。この情報が十分届かなかった場合を考えて、3月15日(日)当日、会場前で待機した。
 幸いというか残念ながらというか、当日誰も来なかったのを確認したあと、一緒にいた仲間とヴェトナム料理レストランに出かけた。
 翌3月16日(月)、連邦政府は、遂にレストラン、商店、ディスコの閉鎖を決定。食料品店、薬屋、銀行、郵便局、ガソリンスタンドなど、必要な場所を例外として、商店の閉鎖を決定した。さらに、葬儀を除いて、あらゆる公的イベントが禁止された。
 連邦政府は、想像をはるかに越えたコロナウイルス対策を打ち出した訳だが、レストラン閉鎖決定の直前にレストランで美味しいフォーを味わうことができたことが、異次元のことのように感じられる。

 2月28日から約3週間の間に感染者の数は急増し、8,547人に達し、死亡者は118人となっている。(3月23日現在、Johns Hoplins University & Medesin Coronavirus Resource Centerの統計サイトより。https://coronavirus.jhu.edu/map.html

 現在、連邦政府は慢性疾患を持つ人、65歳以上の年配者を中心に、外出をしないよう呼びかけている。私の住むカントン・ウーリでは、3月19日に外出禁止が発令され、同20日午前0時から実施された。買い物も行けないことになった。わずかに1日2時間程度の散歩だけが許容されるものだった。該当年齢に達している私はビックリしたり、腹を立てたりした。ところが、その日の連邦政府記者会見で、多くのジャーナリストがこの問題を取り上げて質問を浴びせた。その結果なのか、ウーリ政府は先の禁止を即日解除した。ただただホッとした。

 これらの対策は新型コロナウイルスと闘うために必要なことなのだろうが、何とも窮屈な暮らしが続いている。それもまだしばらくは続きそうだ。こんな時だからこそ、少し二歩も三歩も退いて、自分の暮らしを総点検し直したり、慌ただしい毎日の中で横に置いておいた本をじっくり読むなど、気持ちを切り替えて、慌てずじっくりとモノを考える時間を持つようにしたいものだ。

 野嶋 篤(アルトドルフ在住)