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インタビュー 宮沢賢治 童話・朗読劇

オツベルと象、動読劇を終えて

クリスマスのイルミネーションが眩しいチューリッヒの11月の週末、押川恵美さん企画の宮沢賢治朗読劇シリーズ、「オツベルと象」を鑑賞させていただきました。前回、インタビューをさせていただいた舞台俳優の奥野さんにもスイスでの初の動読劇の感想なども伺いました。
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SWN:腹から声を出すというのは、こういうことを言うのだ!これが奥野さんの第一声を聞いて率直に感じたことです。
コンパクトでちょうど良い大きさの劇場に響いた声に、すでに物語に引き込まれていました。
普通は本で読むはずの作家の物語を、声を出して伝えるのですから、観ている人に分からなければいけないのは当然で、自身の表現に加えて物語を伝えなければいけないという、2つの役割。一語一語がはっきり発音されていることに、役者としての経験が詰まっていると思いました。

奥野さん:そのように感じていただけてとても嬉しく思います。細かい心理描写などは賢治がすでに文字で表現してくれているので、俳優がやることといったら、あとは身体性に立脚した明瞭な日本語で発信するだけ………ってところに行き着いた感じです。

SWN:宮沢賢治の作品で、注文の多い料理店というのがありますが、どこかその物語にも通じるところがあり、子供の頃は分からなかった、大人の社会の縮図が宮沢賢治の物語には詰められています。オツベルは白い象をうまく騙しこきを使います。しかし、次第にエスカレートし、それも長くは続きません。
この物語を観て思うのは、賢治の生きた時代と日本の現代社会は、本質はあまり変わっていないと言うことかもしれませんね。

押川さん:私は逆に、賢治には世界がこのように見えていたのだと思います。ほかにも『カイロ団長』というカエルの世界のお話があります。地主が小作人を搾取するさまが、彼にはカエルたちがやっている世界に見えたのでは。搾取や虐待は人間の世界ではなく、動物や修羅の世界と賢治の目に映ったのでは?

SWN:劇中では、観客にも参加してもらう形で、「ノン、ノン」というセリフが出た時に、足踏みなどをして音を出してもらうアイデアがありましたが、これは奥野さんの舞台経験から出てきたものでしょうか?

奥野さん:動読ではお客さんに参加してもらう演出をよくやらせていただいてます。お客様に舞台上にあがってもらって作品を盛り上げる、いわゆる”客いじり”という手法があったりしますが、歌舞伎の”掛け声”などにもみられる舞台と客席の仕切りをとっぱらった時に生まれる観客との一体感は、ミニマムな作品を目指す動読にとって、作品を豊かにしてくれる重要な部分だと思っております。

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SWN:赤木さんのバイオリンも、劇の節目だけではなく、物語に合わせてバックでも演奏されて臨場感が出ていました。舞台での音も非常に重要だと思うのですが、普段の舞台で生演奏で合わせることは多いのでしょうか?赤木さんは、こうした劇での演奏はいかがでしたか?

赤木さん:ボクはこういったことをするのは初めてです。よくわからないながら自分で感じたことを弾きました。普段は楽譜を見て弾くのが普通なんですがこうして即興的に弾くのも大変面白かったですね。自分にとって全く新しいジャンルです。また機会があればやりたいですね^^

奥野さん:私が所属しているSPACの芸術総監督の宮城總氏は『祝祭音楽劇』というスタイルの演劇を追求している方でもあり、その時は俳優が楽器演奏も兼ねていて、裏に回れば生演奏も担当するんです。生演奏に限らず、音楽によって俳優の演技は大いに変わってくると思います。

SWN:どの言語でもそうですが、言葉の持つ力は強く、時には人を傷つけ、時には人を励ますことも出来ます。宮沢賢治の物語を通して、改めて日本語の表現の豊かさを感じますが、ご自身が演劇というものを通して、セリフや言葉そのものに気をつけていることはありますか?

奥野さん:やはり呼吸の強弱、音程の高い低いや間などの構成に気をつけています。あと、日本語の特徴である『子音と母音の組み合わせ』ということに注意し、母音をしっかり発音することによって、はっきりとお客様にお伝えするよう心がけております。

SWN:押川さん、今回「動読劇」の公演を終えて、今までの宮沢賢治の朗読劇のプロジェクトと比べて、いかがでしたでしょうか?
観る側としても、同じ宮沢賢治の世界ですが、毎回構成が異なり、全く新しいものを観る感覚がします。

押川さん:私は自分が見たいと思うものを,毎回作っています。動読劇とはどんなものなのか見たかったのですが、今回前のほうに座るように言われたのであまり奥野さんが見えなかったのが残念です。遠近法で象を大きく見せるためだそうです。お気づきになりましたか?

SWN:なるほど、確かに膨張色の赤と白のコントラストは、目を引くものがあり、観る側の舞台上の効果はあると思いましたが、そうした演出だったのですね。
最後に今後のプロジェクトや目標などお聞かせください。

奥野さん:アメリカやロシア、フランス、イタリア、トルコなど、これまで様々な国で行われたツアーに参加させていただきましたが、公演でスイスに来たことはなかったので、SPACやNoismなど、私が日本で出演しているカンパニーの作品のスイス公演ができたらいいなと思っております。

押川さん:
賢治シリーズの最終回である『銀河鉄道の夜』を朗読劇で上演します。今まで上演してきたものは、リクエストがあればそこに出掛けていって出前上演を続けることも考えています。

SWN:「銀河鉄道の夜」は以前に、集大成的な意味でも上演したいとおっしゃっていたのを覚えています。今度はまたどのような構成になるのか楽しみですね。宮沢賢治をもう一度読み直してみようと思わせてくれたこの動読劇、次回もぜひお邪魔したいと思います。
また動読劇及び朗読劇の公演情報は、スイスワンダーネットでもお知らせしていきたいと思います。

長いインタビューにお答えいただき、どうもありがとうございました。
皆様の今後のご活躍を祈念いたします。

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