4月にバーゼルで3日間行われたストリートフードフェスティバルに出店された、唐揚げ屋さん「WAKARA」のオーナー中村さんにお話を伺いました。
お忙しい中、そして暑い中お邪魔致しました。世界のストリートフードが集まる活気のある中、お客さんの反応はどうでしたか?
中村さん:絶好調です!と言いたいところですが、まだまだですね。食べていただいたお客さんからは、「これ鶏肉?すごくジューシーで美味しい!こんなフライドチキンは食べたことがない!」ってビックリされ、お褒めの言葉をいただくことが多いのですが、まだまだフライドチキンというと欧米型のパサパサしたイメージが強く、「あぁフライドチキンか、何が特別なの!?」って思われている方がほどんどのようです。しかし食べていただくとその違いを理解してもらえます。ですので、食べていただくまでがポイントですね。
エンジニアであった中村さんが、スイスの地で唐揚げ屋さんとして独立することになったきっかけを教えてください。
中村さん:エンジニアと言うと少し大袈裟な感じがしますが、私は元々大型な産業用機械のメンテナンスや修理を行うサービスマンとして日本とスイスでサラリーマンをしていました。しかし、その会社のスイス営業所がベルギーのヨーロッパ本社と統合されることになり、会社からはベルギーへの転勤のお話もいただいたのですが、スイスでマイホームも購入し、妻がスイス人であることもあり、何よりスイスに来た理由がやはり家族でスイスで暮らしたいという気持ちだったので、家族第一と考え、その会社を退職し、その会社のお客さんであったスイスの鶏肉加工会社KneussにTechnicianとして転職しました。その会社では機械のメンテナンスだけでなく、工場内の設備管理等Technicianとして多くのことを学び、無いものは作るという概念が身についたように思います。また日本人は私一人でしたので、意思疎通など大変なことも多かったですが、その環境の中で仕事をする、何かを成し遂げた時の達成感、楽しみは多くありましたね。
そして、ここからどうして唐揚げを始めることになったかというと、鶏肉会社の従業員としてスイス産の美味しい鶏肉が安く手に入る状況でしたので、「この美味しい鶏肉を使って日本人にしか出来ない何かしてみたいなぁ」と日々考えていました。そんな時にひょんなことから日本唐揚協会の会長さんである、やすひさ会長とお知り合いになることが出来、いろいろお話するうちに、スイスで唐揚げを広めてみよう、やってみようという軽い気持ちで始めたのがはじまりですね。そして始めてみると予想以上に好評で、美味しいものを作ってスイスの方に喜んでもらえる、また日本という素晴らしい国をスイスの方に伝えることに日本人としてうれしくもなり、楽しくもなってきたんですよね。
最初のうちは趣味程度と考えていたのですが、やっていくうちに人生一度きりだからチャレンジしてみたい!という気持ちが日に日に強くなり、それを会社に相談すると「会社を辞めても引き続き安く鶏肉を卸してあげるよ」という優しい気持ちにも触れ、独立しようと決心しました。今でもそうですが、独立するまでもさまざまな人に助けられて、感謝しかないですね。