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インタビュー

舞台俳優、奥野晃士さんインタビュー

2014年からスイスに暮らし、スイスと日本を行き来し活躍されてる舞台俳優の、奥野晃士さんにお話を伺いました。
今週末11/21(土)に公演の、動読劇「オツベルと象」(宮沢賢治)についても伺いました。
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SWN: まずはじめに、最初に奥野さんが演劇の世界に入ったきっかけはなんでしたか?

奥野さん: 学生時代に趣味で日本舞踊を学んでいたのですが、身体を使った表現が面白くなってきだした二十二歳の春に講演会の司会を頼まれたことがあり、もともと言葉を使った表現にも挑戦したいと思っていたので、思い切って町の俳優養成所の門を叩きました。

SWN: また、スイスに来ることになった経緯を教えてください。

奥野さん: 大阪で小劇団を主宰したあと、2000年から最初は3年契約で、厳しい稽古でも有名な世界的演出家の鈴木忠志芸術総監督のもと、SPAC(スパック)-静岡県舞台芸術センターに所属させていただくことになりました。はじめて主役に挑戦した2004年にヘルニアを患い、さらに主役作品での海外ツアーなどハードな仕事が続いた末、2007年暮れの『どん底』というゴーリキーの作品をベースにした鈴木演劇の公演中、腰痛が悪化して楽屋で立てなくなり、台車に乗せられて新国立劇場の楽屋口から出るという正に『どん底』を味わったのですが、痛み止めを飲んで何とか翌日の千秋楽を無事終わらせたものの、折しもSPAC芸術総監督交代の時期。富山県利賀村にある鈴木氏の拠点SCOTへ移籍の話もご辞退し、制作の手伝いなどをしながらSPACに残留させていただくことに。その頃、SPACにインターンとして2代目芸術総監督宮城總氏の関係で、東大から一人のスイス人女性が制作スタッフで来ることになり、リハビリにも有効なフェルデンクライス・メソッドを学んでいたことから腰痛治療の実験台になっているうちに付き合いはじめ、結婚。
ほどなく身ごもったのですが、出産直前に東日本大震災が起こって、大使館からの避難勧告に従って臨月の時、急遽日本を脱出し、スイスで娘を出産。以来、日本とスイスを行ったりきたりするようになったのですが、ワイフの求めに応じる形で、SPACとは作品契約にしてもらい、2014年7月、スイスに移住することになりました。

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SWN: 今回、宮沢賢治の「動読劇」という、あまり聞きなれないスタイルの劇のようですが、私も過去2回ほど、この宮沢賢治の「朗読劇」は鑑賞させていただいています。表現の世界を文書で説明するのも難しいと思いますが、「朗読劇」との違いはどんなところでしょうか?
これから見る方にも少し教えてください。

奥野さん: 元々、SPACの企画でピアニストさんとのコラボで俳優が自分の好きな作品を朗読する『朗読とピアノの午後』という企画に私も毎回出演していたのですが、終演後にお客様から

「奥野さんのはあれも『朗読』なんですか?それともあれは『一人芝居』になるんですかね?」

など聞かれることがよくありました。そんな時は私も冗談で

「あれは『朗読』じゃなくて、動いて読むと書いて『動読(どうどく)』っていうんですよ」

とか何とか言っていたのが、いつの間にか定着してきた感じです。
朗読との違いについては、

「『文字言語』で表現された文学作品を『音声言語』で表現する芸術」が『朗読』であるなら、
『動読』は、「『音声言語』に『身体言語』を加えた表現」といったところでしょうか………。

SWN: 音楽とのコラボレーションも楽しみですね。

奥野さん: 俳優は持って生まれた生の身体から発する言葉や動作で表現しますが、音による表現の音楽家さん達は、その楽器の習得までに子供の頃から膨大な時間を費やしていらっしゃるので、毎回とても勉強になるし、一回性にかける音と言葉のセッションは、まさに動読の醍醐味だとおもいます。

SWN: 自分自身は、演劇とか俳優を志したことはないのですが、例えば映画などは好きで、作中の俳優さんの演技をじっくり見ることがあります。
というのは、映画ですから全て演技なわけです。その役になりきっている俳優さんの仕草や表現、どこまでがその人の自然なキャラクターなのか?
そんなことを思いながら、見てしまうのですが、奥野さんは、その役に入る時に決めていることはありますか?

奥野さん: 演劇にも大きく分けて、メンタル面から役にアプローチするメソッドと、フィジカル面からするそれとがあり、映画とかは前者の系統が主流だと思うのですが、鈴木忠志氏は劇場という空間における身体性を深く追求してこられた方で、どちらかというと(いや、徹頭徹尾)後者なんです。氏の演技論の中にはよく『動物性エネルギー』という言葉がよく出てきますが、一度舞台に上がるとそこは正に戦場、まずは真剣勝負をする侍のごとき隙のない集中、張り詰めた緊張感…というのが、今もベースにあると思います。

SWN: また、演じる時は、自分自身のキャラクターは消すのでしょうか?俳優としての個性とか、個人のとしてのキャラクターとか色々あると思いますが。

奥野さん: いろんな考えがありますが、基本的には私はすべての動きやセリフは全部意識的に行うことを目指しますので、無意識の動きとかをできるだけ排除したいと思っております。ただ、舞台で型を守りながら、ギリギリまで集中も高められた時って、狙ってなくてもその俳優の個性がいい形で出てくるんですよね。

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SWN: スイスを始め、欧州でもミュージカルや舞台は人気がありますが、見に行かれることはありますか?

奥野さん: 10月の終わりにチューリッヒバレエの『GODS AND DOGS』という、イリ・キリアン氏の振り付け作品をはじめ、W・フォーサイス氏やO・ナハリン氏というビッグネームの振り付け作品3本立てを観に行きましたが、本場ヨーロッパの舞踊の圧倒的に豊かな表現の数々に「恐れ入りましたっ!」って感じでした。

SWN: スイスに来て2年目ということですが、芸術活動の場として、どんな印象を受けましたか?日本との違いは?

奥野さん: 日本はプロダクションとマスメディアとの利権が絡んでいたりして商業的なところがあり、舞台も純粋に芸術を追求する人たちは東京を離れて地方から発信しようとする流れが出来つつあります。ヨーロッパは芸術を愛好していた王様が多かったせいか、国の文化政策の一部として演劇が社会に認められている感じで、劇場が身近だとおもいます。スイスでも、とりわけチューリッヒで見れる舞台は芸術性が高く素晴らしいです。

SWN: 確かに劇場もですが、美術館へ行くと、絵画のコレクションには圧倒されますね。芸術、文化が育っているのがよくわかります。
ところで、スイスで生活してみて、驚いたことはありますか?

奥野さん: チューリッヒやベルンなどの都会でも、そこらじゅうに緑があり、川が流れ、道端に飲み水が沸いてて、放牧されている羊の姿も見ることができる。あと電車やバスなどでも、知らない人がベビーカーを引っ張り上げてくれるのが当たり前だったり、子育て環境がとても整っていると思いました。ただ、靴を脱がずに家に入ってくるのには、ちょっと抵抗を感じます。

SWN: 最後にまだ「動読劇」を見たことのない人に、メッセージをお願いします。

奥野さん: 今回の公演は、私が動読活動をし始めてから初の海外での公演という、私にとって歴史的な機会です。しかも、スイスを中心に地道に朗読劇活動を行っている押川恵美さん、バイオリニストの赤木春次さんという素晴らしい日本人表現者のお二方との共演による日本語の上演なので、スイス在住の大勢の日本人の皆様にも多数ご来場いただきたいとおもいます。尚、不定期ですがブログ”おくぬ〜の『来た球を打つ!』”で、スイスでの生活を中心に、稽古の様子などを発信しております。
ご笑覧いただけたら幸いです。
http://kitatamaoutsu.blog.fc2.com/

SWN: ありがとうございました。毎回コラボレーションが違う宮沢賢治の朗読劇ですが、今回もまた楽しみな公演になりそうです。
動読劇オツベルと象は、下記日程にて公演です。是非みなさんも足を運んでみてください。
また、2公演後の感想も奥野さん、主催者の方にもお話を伺う予定ですので、楽しみにしていてください。

2015 年 11 月 21 日(土) 20:00—21:00
Theater Schwyz /Bahnhofstrasse 178 6423 Seewen / Schwyz
21.11.2015 (Sa) (Schwyz 駅下車徒歩 4 分)
http://www.theater-schwyz.ch/theater-schwyz/theater-schwyz.html

2015 年 11 月 28 日(土)20:30—21:30
Zentrum Karl der Grosse/ Kirchgasse 14
8001 Zürich 28.11.2015 (Sa)
https://www.stadt-zuerich.ch/sd/de/index/soziokultur/karl.html
入場料 Eintritt 25 Sfr Student -AHV 20 Sfr Kinder (7bis16Jahre alt )10 Sfr
Reservation emi.oshikawa@bluewin.ch
Sponsor : Kulturkommission Gemeinde Schwyz
宮沢賢治 Kenji Miyazawa・・・作 Autor
Japanisch mit deutschen Untertiteln

そして、2016年1月に日本で公演が予定されているカルメンもぜひご覧ください。
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Carmen PDF

関連リンク
noism:http://noism.jp/
SPAC:http://spac.or.jp/
SCOT:http://www.scot-suzukicompany.com/