差別を意識したのは最初の海外生活

仕事場での差別意識

カナダ滞在中は、決められた時間内でアルバイトをすることが出来たので、飲食店のキッチンでアルバイトをしました。その職場では、上海出身と香港出身の中国人、韓国人、そして日本人が働いていましたが、上海と香港の出身の二人はどうも仲が悪い。二人とも中国人ですが、香港と上海では、言葉も違うし文化も違う。そうなると、馬が合いません。もちろん仲のいい人もいると思いますが、お互いなるべく口を聞かないようにしているのがわかりました。

よく日本と中国、韓国の外交上の軋轢をニュースで見ますが、政治的に見て仲は良くなくても、個人レベルでは、そうではありません。実際にこの中国出身の二人は仲が悪かったですが、二人とも日本人の自分にはすごく良くしてくれましたし、香港出身の同僚は、日本に帰る際は食事にも招待してくれました。もし香港に旅行することがあれば、俺が全て手配してやるから、必ず連絡しろとまで言ってくれました。

ただし、これが見知らぬ相手となると、状況は変わります。ある時、短期間ですが、新しい部屋を探す事になり、貸し部屋の広告を新聞で見て電話をしました。電話に出たのは、香港出身の女性。ビジネスウーマンで、綺麗な1軒家に住んでいて、そのうちの1部屋を貸し出していました。すでに別の部屋は借りられていて、そこに日本人の自分が見に行ったわけですが、部屋の案内も説明も面倒臭そうで、正直、不親切で印象は悪かったです。自分に部屋を貸したくないというのは、すぐに感じたので諦めて帰りました。案の定、別の人に決まったからという連絡がありました。

翌日、香港出身の同僚にそのことを話すと、その女性は自分の知り合いだと言います。全くの偶然ですが、同僚はすぐに彼女に電話して、自分の同僚の日本人が昨日部屋を見に行ったことを話すと、その日の夜、自分のところに家のオーナーの女性から電話があり、ぜひあなたに部屋を貸したい、家賃も割引してあげるから!と言われました。

手のひらを返したような態度に少し戸惑いましたが、結局他の部屋を見つけたので、辞退しました。人脈があるかないかで、その態度はあからさまに違います。その一回の経験で言い切るのもどうかなと思いましたが、香港の同僚が言うには、結局そういうことなんだということです。確かに、すべてのことに八方美人では、事が進みませんし、自分も苦しくなってくるでしょう。知人友人は大切にして、他はドライに対応するなんてのは、確かに日本でもあるかもしれません。ただそれが露骨なだけでしょう。この場合は、差別から区別に対応が変わったわけですが、最初から相手の国籍を見ていたことは明白でしょう。その頃からだんだん差別というものを経験し意識し始めます。

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