スイスの学校事情


スイスに暮らす子供達は、私立やインターナショナルスクールを除いて、公立の学校に行くことになる。
基本的に、中学までは住んでいる地域の学校に通うわけだが、これにも色々事情があるようだ。

まずはその年によって、子供の数も違うわけで、1クラスが大体20人から24人くらいになるようにしているが、これを上回る場合は、隣の学区に近い子供が別の学区の学校に生かされることもある。多くの親がその可能性がある場合は、察知して事前に地元の自治体に手紙を送り、なんとか近い方の(本来の)学校に通えるように懇願し承認の手紙を待つことになる。場合によっては、兄弟で違う学校に通うことになることもある。

それ以外にも、家庭の事情、イジメの問題などで転校していく生徒もいる。ひどい場合は2度も転校を余儀なくされた生徒もいる。
イジメの問題は特にどこの学校や先生も敏感ではあるが、先生によって対応の仕方も違うため、全く対応してくれない場合、すぐに対策をしてくれる先生と様々だ。
対応してもらえない場合は、先生に改善を促すよりも、転校を選択したほうがいいそうだ。
多くの場合、若い先生がクラスをまとめるのに必死で、個別におきたイジメなどの問題に対応しきれず、校長まで話が上がった時には手遅れと言うことが多い。
イジメが起きた場合は、クラスで話し合い、生徒にそれを意識させるのが重要だ。それでさらに注目を浴びて、いじめがエスカレートするのではと思いがちだが、最初の対応としてはこれが適切な対応かもしれない。

スイスには授業参観日がないため、何かのプロジェクトで親が招かれる以外は、担任に申し込んで授業を見ることができる。担任もこれを断れない。
実際に自身も子供の授業を見る機会があった。
その時の授業にもよるが、まずは自主的に作業をしている生徒が多い。もちろん集中していない生徒、何をしたらいいかわからない生徒、歩き回る生徒などもいる。
保護者の見学がある時は、多少は意識しているのかと思いきや、先生も生徒もほとんど関係ない感じだった。

クラスをまとめる担任と生徒の信頼関係がいかに重要か、それを象徴する事象があったのだが、産休で不在だった担任の代わりに若い男性教諭が半年担当。しかし、うまくまとめきれず、生徒が先生に対して敬意を欠き、クラスはバラバラに。もう学校に行きたくないと言った生徒も何名か出て来て、かなりひどい状況になり、最後は校長も出て来て保護者会となったことがある。この状況を最初に察知したのは保護者で、保護者が団結して学校に説明会を促した。

学校側の説明会もなかなかのものだったと言える。最初から苛立っていた保護者を抑えるように、各テーブルごとにテーマを設けて分け、保護者が質問したいテーブルに行き、担当者と議論すると言うものだった。これで分散ができて怒号が飛ぶようなことはなかったが、不完全燃焼だった親もいるようだ。そう言う場合は、個別面談が組まれた。
この件は、結局担任が復職してから解決したが、起きた問題に対してアクションを起こした保護者とそれに対応した学校運営側の良い事例だったように思う。

日本と違い、クラスの国籍や親の出身地は様々だ。文化や宗教の違いを持った生徒たちをまとめるのは、大変であることは間違いない。
しかし、地続きの欧州が多くの難民を受け入れ、多様な人種と共存するためには、偏見のない子供の頃からの教育がいかに重要かを感じる。