日本の知名度

日本に関する情報

海外生活が長くても短くても、誰かと親しくなれば、どこの国の出身なのか?と聞かれることは当然ある。様々な年齢層のスイス人およびヨーロッパの人、2世の人と言った具合に、向こうが外国人の場合も多い。

もちろん聞かれれば、「日本です」と答えるが、答えた後の相手の反応や知識、興味の範囲など、本当にバラバラで項目を決めて統計でも取れば、スイス人の日本に対する認知度のデータが取れそうだ。
まずは、日本のことを知っていて当然などというおこがましい考えは捨てるべきで、我々が北欧の国々の違いを混同するように、欧州に暮らしていてアジア圏の知識はさほど必要ではない。

まずはスイス人の最初の反応、知見は、アジアの大国、車のメーカー、電化製品のメーカー、寿司、ハイテクな国などが一般的だろうか。
日本に行ったことがある人は、もちろん日本に対する独自の知識と経験を持っているが、そうでない人は、やはり中国と間違われることが多い。
日本の首都は北京でしょ?と聞かれたこともあるが、やはり極東アジアは一緒くたのようだ。地理的な場所はもっとわからない。

もう少し知識のあるスイス人は、もう少し別の話題をふってくる。それは日本の食について。これは食べることに興味のある人は、やはりお寿司が好きとか、最近ではラーメンなども覚えて、どこかに新しくできた日本食のお店を話題に出してくる。
もう一つは、日本のMANGAからの知識。若いスイス人にも日本のMANGAが浸透していて、よく知られている。MANGAに描かれる日本の風景を通して、興味をそそられるスイス人も多くいる。
これだけでも、スイス人の日本に関する知識は、はっきり言って上出来だと思う。自動車メーカーの名前や都市の名前、日本食の話題など、一つの国に対する情報としてはまずまず。

日本の労働環境

この次の段階になると、もう少し踏み込んだ内容になる。それは、日本人の働き方だ。国際的な企業も多く、同僚に日本人がいることは珍しくない。一緒に働いて得た印象と、不名誉なことに「過労死」などの問題もクローズアップされて、TVでも取り上げられるため、意外と日本の社会の内情を知っている人が多い。ビジネスでの取引があったりする人も言葉の壁や習慣の違いがあったりして、良くも悪くも印象には残るようだ。

日本での経験

最後は日本で暮らしたことのあるスイス人。期間にもよるが、暮らした経験を持っていると、言語も含めて、やはり日本に関する知識は豊富で鋭い質問が飛んでくる。
日本社会に溶け込んでいるようで、実は別扱いされていたり、彼らなりに違和感を感じ、理解しカルチャーショックを克服して行く。もしくは、耐えられなくなって、母国に帰る。日本で暮らした人は、例え自分がうまくやっていた方でも、受け入れられずに日本を離れた人をたくさん知っているので、その気持ちがわかる上、我々のようなスイスに住む日本人の気持ちも汲み取ることができる達人に思えてしまうほど。

この感覚は、例えば、日本人と結婚しているが、日本での生活経験がないスイス人には感じたことはない。日本人と結婚していても、欧州で暮らしている場合はこの感覚は養えないのが当然で、その国で暮らした経験というのはやはり別格だ。
日本人の奥さん(配偶者)を通して得る情報が彼らの日本であり、残念ながら日本に対する文化的な知識や好奇心は薄いと思うことが多い。つまり理解しているようで理解していない人が多い。自分の経験から得た知識や情報でないことは、すぐにわかる。稀に日本に対する興味すらなかったりして、たまたま奥さんが日本人だった、くらいの人もいる。まあ、スイスに暮らしていればどうでもいいことなのかもしれない。

あとは、日本人である自分に対して、スイス人に話す感覚で日本の批判を繰り返す人には多少困ったことがある。向こうとしては、スイス生活が長いのだから、当方もスイス人と同じ思考なのだろうという思い込み(ある意味少し認められたようで嬉しい時もあるが)、内容のない、うわべだけの日本の悪口を言ってくる人がいる。大抵の人は自分の話相手が日本人だと後で気がついて、気まずい顔をするのだが、お構い無しの人もいる。
色々と批評を言われるのはもう慣れっこだが、一度だけ気に障ったことがある。それは日本人同士の会話を聞くと耳障りだ、日本語の音が不快だと言った人がいる。もちろん何を言っているのかわからない言語を耳にして不快に思うのは仕方ないが、それを日本人の前で発言するのはどうか?しかも彼の奥さんは日本人。その発言自体が不快では?まあ悪気はないが、礼儀もないのだろう。

日本の話はほどほどに

とにかく、いろんな意味で日本の知名度は高い。ネガティブなこともあるが、総じて良い印象の方が優っている。そして、日本に対する知識は、段階的には3段階くらいの幅だろうと感じている。
サッカーW杯も相まって、スイス人に日本の印象を聞くのは面白い。中には、日本人選手の所属クラブや経歴を詳しく知っているサッカー通もいて、話は盛り上がる。ただ最近は、特に日本に対して全く知識を持たない人、ローカルなスイス人との会話の方が面白いと感じる。単純に自分の知らないことを話してくれるから。日本に興味を持ってもらえると、確かに話しやすいが、スイスに住んでいたらローカルネタをふるのが一番だ。くだらない地元のスキャンダルネタでも頭に入れておけば、そこから話が広がったりする。

かつて妻に注意されたが、いつも日本ネタを持ち出して話すのはほどほどにした方がいい、皆が日本に興味を持っているわけではないから。と言われた。確かにその通りで、日本ネタを封印してローカルのスイス人と話せば、スイス人が何を考えているかがよりわかってくる。
日本の知名度が高いと知った現在は、ネタ切れの時だけ日本の話題を出すように心がけている。