ワインが瓶詰された後、長い時間が経つと熟成香というレーズンに似た
特有の香りが付いてくる。これ自体は欠陥ではないが、もともとフルー
ティなタイプのワインにこれが付いてしまっては、本来のブーケが台無
しになってしまう。反対に樽熟成を行わせた複雑なブーケを持つワイン
の場合は、この香りが一層ワインに深みを与える。

他にワインにあってはならない香りは、発酵の不良から来る、玉子の
腐ったような香り、極端に強い酵母の香り、セメダインの様な香り、酸
化防止剤の過多による硫黄の様な香り、酸化によるアセトンの様な香
り、コルクの香り、サビや金属の香りなどがある。

直射日光に長く当たったり、30度を超える高温の環境下で1週間以上
経過したりすると、マディラワイン特有のカラメルの様な香りがついて
しまう。これを焦げ臭と呼んでいる。マディラワインには正常な香りな
のだけれど、これが普通のワインに付いた場合欠陥臭となる。

日本で長期間ワインを保存する場合、夏場にこの温度に達する危険が大
きく、専用の冷蔵庫などで保管する必要が生じる。しかし、地下の蔵な
どがあり、夏場でも30度に達しない環境であれば、そこに保管するこ
とが出来る。スイスのアパートには地下倉庫が付いているケースが多
く、夏場でも30度には達しないので、ここにワインを保管するのがベ
ターだ。

この様な欠陥臭を持つワインは、レストランなどで注文したものであっ
た場合交換してもらえる。良心的なワインショップだと、ボトルを持っ
て行くと交換してくれる場合もある。

レストランなどで最初にワインを少量注がれ、味見をしなければならな
い時、この欠陥臭の有無に特に気をつける。上記した欠陥臭を感じた場
合、堂々と交換してもらおう。欠陥臭を最も良く感じるためには、注が
れたワインを振り回さず、そのままグラスを鼻の近くに持って行き、強
く香りを2~3回吸い込んでみる。この方法が一番欠陥臭を感じやすい
と言われている。

注がれたワインを振り回してしまうと、そのワインの持っている健全な
部分の香りが引き立ってしまい、欠陥臭を感じにくくさせてしまう。つ
いつい気取って振り回したくなってしまう衝動を抑えて、そのまま静か
にグラスを鼻の近くに持って行き、まずは強く吸ってみよう。振り回す
のはそれからでも遅くはない。