ワインの味は主に酸味、甘み、渋み、苦みから構成される。日本酒を評
価する時に、酸甘辛苦渋(さんかんしんくじゅう)の調和が取れたもの
が上質とされるけれど、ワインに辛みは含まれない。

では、ワインの場合甘口、辛口というではないかと疑問も持たれだろ
う。実際は残糖分の少ないワインを辛口と評しているだけで、本当に辛
いわけではない。辛口なのに甘みを感じるワインもある。これは熟成に
よってタンニンなどが分解して甘味が生じるなどするからだ。

ワインの甘さは、ワインに残されている糖分の量によって原則区別され
る。この甘さは舌先の部分で良く感じやすい。しかし、熟成によって生
じる甘さは、舌の真ん中あたりで良く感じる。この熟成の甘さは、他に
生じる様々な成分と相俟ってワインのコク(ボディ)を作り出してい
る。ワインのコクも舌の中央あたりで良く感じる。

ワインの味で良く感じるのは酸味だろう。十分な酸味は、これもワイン
の熟成から来る甘みと相俟ってワインのボディを形成している。ワイン
の酸味は舌の左右の縁の辺りで良く感じる。ワインの酸味を感じさせる
成分は沢山あるが、特に酒石酸という酸が豊富に含まれている。この酒
石酸は熟成と共に沈殿するなどしてワインの澱の素となる。

特に赤ワインでは渋みを含むワインも多い。この渋みの素となるタンニ
ンはぶどうの皮や樽熟成による樫樽からワインに溶け込んでいる。渋み
は舌より、例えば歯ぐきなどで良く感じる。

以上のコク、甘み、酸味、渋みはワインに不可欠な味成分だが、苦みも
多少含まれる。これはぶどうの種や梗などからもたらされる。しかしこ
の苦みはワインには好まれず、苦みを含むワインは評価が低くなる。ワ
インの苦みは舌の中央から奥にかけて良く感じる。

この様にワインの味には良く感じやすい舌の部分があるので、ワインを
試飲する時には口をすすぐ様にして口中でワインを味わうといい。そし
て甘みを舌先で、酸味を舌の両端でなどの要領で注意して味わう。する
とこのワインがどんな特徴の味を持ったものかがわかりやすい。

甘みを感じるワインは直感的に受け入れやすい。しかし、ワインは料理
とも合わせて飲むものであるから、十分な酸味も必要となる。コクや熟
成から来る甘みは料理の邪魔をしないが、糖分から来る甘みは料理との
相性を壊す場合がある。

軽い料理だったら、少し甘みの残るフルーティなワインも合うが、重め
の料理には酸味やコクが十分なものがいい。こってりした肉料理には酸
味やコクに加え、渋みのあるワインがいい。とても甘いワインはデザー
トと相性がいい。だから、ただ試飲した時の印象より、その味の構成を
捉えて、料理と合わせてどうなるかを想像しよう。ワインと料理によっ
て思わぬハーモニーが生まれ出るものなのだ。それもワインの醍醐味の
一つだ。

料理とワインの相性は、赤ワイン、白ワイン、といった色による区別よ
り、個々のワインの持っている味の特徴によって本来決まるもの。白ワ
インの重いものには、十分に肉料理と合うものもあるし、赤ワインの軽
いものは魚介類とも相性がいい。

スイスワインで一般的には、東スイスで多いリースリング・シルヴァネ
ルはアペリティフ向き。西スイスで多いシャスラは魚介類やチーズと合
う。スイス全般に、ピノ・グリはシャスラより重めに作られる事が多い
ので、こってりした魚介類の料理と合う。ピノ、ノワールは魚介類から
ソーセージ、軽い肉料理まで。ティチーノのメルロやヴァリスのディオ
リノワなどは主に肉料理、ものによっては重い肉料理に合う。