ワインの味は時間と共に変化する。例えば栓を抜いて30分後、1時間
後、2時間後、と飲んで行くと、その味の変化がわかる。通常、栓を抜
いて30分くらいすると、香りが立って来て、ワインもふくよかにな
る。ワインを飲む前に白だったら30分を目安に、赤だったら1時間を
目安に抜栓しておいた方がいい。

ワインはその日のうちに飲みきった方がいいが、栓をして冷蔵庫に保管
しておくと2~3日は楽しめる。赤ワインの重いものでは、抜栓して翌
日の方が美味しいなどということもある。しかし、数日保管したい場
合、市販されている瓶内の空気を抜けるゴム栓などを用いることをお勧
めする。

瓶で保存しておいても、ゆっくりと変化していく。このゆっくりとした
瓶の中での変化は、瓶熟成と呼ばれる。味の強さはどんなワインでも瓶
詰したてのものが一番強い。時間が経つに連れて、これが薄れ、やがて
はどんなワインでも味の成分が分解されて水のようなものになってしま
う。もっともここまで達するには千年の歳月が必要とされる。人間の寿
命からして、ここまでの熟成の変化を追うのは不可能だ。

熟成は味成分の分解をもたらすけれど、それによってあまりに強すぎる
味をマイルドにしたり、調和の取れた味にしたりする効果がある。また
赤ワインに含まれるタンニンなどが熟成によって分解して甘みをもたら
したりする。この様な効果は、ある時期までは分解によるデメリットよ
り遙かにメリットが上回る。

この熟成が効果をもたらす期間はワインによって異なるが、フルーティ
なワインは短く、ボディのあるワインは長くなる傾向にある。また、タ
ンニンを多く含むワインは長くなる。よってボディのある力強い赤ワイ
ンは長期間の瓶熟成が出来る。

もし高額な赤ワインを買って、そのワインが期待に反して、粉っぽく、
渋くて、酸っぱいワインだったら、それは飲むのが若すぎた可能性が高
い。それぞれの成分がまだ調和されず、ただただ味が強いばかりの時の
ワインは、そんな味がする。しかし、そういうワインは最低5年、10
年くらい寝かせると熟成によって花開いてくる。

フルーティな白ワインは反対に熟成させるより、フレッシュな味が強い
うちに楽しんだ方がいい傾向にある。こうしたワインは低価格なので、
購入後自宅のセラーに寝かせるよりは早く飲んだ方がいい。ビンテージ
から3年以内に飲む方がいい。赤ワインもフルーティなタイプなら3年
以内、多少重いタイプのものであれば5年から8年が目安だ。熟成向き
の重いワインだったら10年以上寝かせておいても楽しめる。しかしそ
ういうワインは最低でも5年は寝かせないと花開かない。

また、ワインは年によって出来が異なり、同じ銘柄でもあるビンテージ
は5年でピークを迎えるのに、あるビンテージは10年以上でピークを
迎えるといった事がある。いいビンテージのワインはこの様に長期に熟
成させてその真価が発揮される。ということは、若いうちには楽しめな
いということなので、もし早く飲みたいなら、同じ銘柄でビンテージの
良くない若い年のものを選ぶ方が得策となる。

もし、若いワインを買って、自分で熟成させて将来楽しむ事をしたいの
なら、今は美味しくない、粉っぽく、渋くて、酸っぱいワインを選ばな
くてはならない。

抜栓してしまった後にまだ若くて楽しめない硬いワインに出会ったら、
デキャンタグラスを用意して、そこにワインを移してみるといい。ワイ
ンは空気に触れるとある程度熟成が進む。普通、デキャンタグラスは古
いワインの澱を取り除く為に用いられるが、この様に強制的に熟成させ
る為にも用いることが出来る。また、最近はクレ・デュ・ヴァンという
熟成を急速に進める器具なども販売されている。ただし、これらは応急
策でしかない。