緩和していくコロナ感染防止対策とその後の日常生活

コロナ前の日常生活は取り戻せるか?

もう2年もコロナに左右された生活をしているなど、2020年のはじめは想像もつきませんでしたが、その後、コロナ変異株もいくつか出てきて、ワクチンも大勢の人が打ちました。現在はどこの国も3回目のブースター接種を進めているところです。

人々の健康と経済を天秤にかけ、各国対策を施してきたと思います。自主隔離、濃厚接触者への通知システム、PCR検査、ワクチン接種にワクチンパスポート、そして、変異株の登場で3回目のワクチン推奨。

オミクロン株が基礎疾患がない場合は、比較的軽症で済むということから、スイス政府も感染防止対策を徐々に緩和、そして、2月中旬にはマスクも着用義務なし?などという話が出ています。

ちなみに、イギリスでは、すでに公共の場でのマスク着用義務はないそうで、オミクロン株のピークが早かったこともあるのか、緩和に舵を切ったようです。同時に経済を優先して、あらゆるウィルスと共存していこうということでしょう。

生活習慣の違いが大きく出たが、今後の影響は

仮にコロナパンデミックが終息して、マスクも必要なくなれば、それはそれでいいことだと思います。終息後に公共の場でマスクを着用していても、誰も変な目では見ないでしょうし、マスクを着用し続けるスイスの人もおそらく一定数は残るのではないかなと思います。

これまでスイスでは、マスク着用=病気の人 と見られがちでした。近くに寄らない方がいいかも、などという人もいました。

日本では、人が密集するところでのマスクは予防、そして他人に風邪等をうつさないため、春先は花粉症対策という認識でしたので、いつどこで誰がマスクをしていたかなんて、あまり気にしません。

日本にように密集する通勤ラッシュの地下鉄では、普段から何かしらの菌を拾ってしまいそうです。実際に、筆者も昔はほぼ毎年インフルエンザにかかっていましたし、実際、冬場は通勤ラッシュの電車内ではマスクをしている人が多いです。スイスでは、そうした状況は想像がつかないかもしれませんが、今回のコロナパンデミックで意識が変わった人もいると思いますので、マスク着用は必要に応じて、自己判断で継続する人もいるでしょう。

これを機に、部分的に生活習慣が変わっていくのかもしれません。

その意味で、コロナ前の生活を取り戻せるか?という疑問には、おそらく、全く同じ形には戻らないと思っています。

分断された社会

ワクチンに対する考え方や、政府のコロナ対策への不満を口にして、仲の良かった友人と口論になったり、親とも意見が違う場合は疎遠になったと言う話を聞くと、社会が分断されたと言ってもいいと思います。挙げ句の果てに、政府に対する暴動やデモ行進が起きているので、社会は分断されています。

コロナワクチン推奨派も反対派も、何か白黒はっきりつけようみたいな雰囲気で、世の中がそんな傾向にあります。ワクチンを打たない学校の先生が、他の先生たちからイジメにあったとか、自分の友人にもそういう人がいます。

自分の経験からも、今回のコロナパンデミックで、長年付き合ってきた友人知人たちの、政治色や宗教色まで強く見えてきたと思います。その人たちの知らなかった一面が露わにされ、驚いたことも多々あります。だらかといって、誰が正しいとか、間違っているとか、そういうことを言うつもりはないですし、お互い友人関係は継続しています。

一方で、そうではなくなってしまった人達もたくさんいると言うことは、残念ですが事実です。

こんなことで、人々の人間関係が分断されるなど思っても見ませんでした。

こうした「危機」に対して、その人の本音やモノの考え方が露骨に見えてしまい、見たくないものを見た気もします。

そもそも他人を気にしないスイス人

自由を奪われることが嫌いで、どちらかといえば個人主義的なところがあるのがスイス人でしょうか。当然全員ではありませんが。

他人が自分のことをどう思おうが、全く関係なく、自分を通すのがスイス人と言う気がしていましたが、コロナ禍では、大まかに2つに分かれてしまい、同調圧力すら感じるスイス人も少なくありません。ネットで色々調べていくうちに、なんだかよくわからない考えになっていく人もいますし、情報が溢れすぎていて、自分が今どの立ち位置にいるのかさえわからなくなります。

世界的なパンデミックゆえに、各国の国民性が出ているのはわかります。興味深くもありますが、ステレオタイプ的に他国の人を見る傾向になるのは、あまり良いとは思えません。

誰でも、国や人に対して、典型的なイメージは持っているでしょう。しかし、本来は、実際に経験したり見たりすることで、そのイメージが変わったりするわけです。

いわばスイスで、見られる側として生活している日本人(外国人)は、周囲の人たちのものの見方の変化や主張にいち早く気が付いたのではないかなと思います。

一致団結といえば聞こえが良いですが、スイス人も意外と世論に流されやすい傾向にあるのかなと言う気が今回しました。

政治に対する関心の高さやより良い社会を形成したいと言う意識の高さを前提に「スイス国民投票」が機能しているはずです。例えば、その国の政治が機能していなくて、国民も政治や自分の生活に興味のない人ばかりの国では、おそらくこの「国民投票」は機能しないはずです。権力を持つ側が押さえつけようとすれば、めちゃくちゃになる気がします。

他の欧州国に比べ、スイスは小さな国で比較的、統制が取りやすいと言う面があります。しかし、コロナパンデミックはスイスだけでの問題ではないために、周辺国にも合わせた対策をしなければいけないでしょう。そのバランスの難しさは、おそらく島国日本以上ではないかなと思います。

コロナ終息後は、どこの国も少し歪に変化した日常社会が形成されていく気がします。