中学校での仮想就職活動プロジェクト

会社設立から

ある中学校で実施されている、中学3年生を対象にした就活プログラム。この研修は、グループ分けされた中3の生徒たちが会社設立から、人員募集、選考、面談、そして採用までを決定して行くシミュレーションプログラムです。スイスの中学3年ですと、進学する生徒もいれば、就職のために研修先を実際に探す生徒も出てくる年齢です。その意味では決して就職のことを考えるのが早いわけではなく、生徒によっては現実的で実践的な研修といえるでしょう。

まず最初に、各グループが会社の設立をするところから始まりますが、事業内容、会社名などを決めて行きます。

社員、見習い募集

会社名と事業内容が決まったら、今度は人員募集を出します。ちなみに、すべての生徒が仮名で就職活動をします。仲の良い友人を優遇したりしないためです。仮名で応募するため、誰が書いたかはわかりません。ちなみに、アメリカでは、一部の企業は年齢、性別、職歴などを一切書かずに応募するという会社もあるそうです。

募集内容には、業務内容なども記載します。

社員、見習い募集に応募する(履歴書作成)

自分の設立した仮想会社の準備とともに、他の会社の応募を探しに行き、生徒全員が興味のある会社へ応募します。履歴書などは、規定の箱に入れて後で取りに行きます。ここでは、志望動機などを書いて、書面での選考になります。

応募の中から、面談候補者を選択

応募書類が揃ったらグループで選考開始します。どの候補者が自分の会社に会うか、やる気を持って取り組んでくれるのかなどを話し合って決めます。

面談を行う

書類選考を通して、面談に招待したい候補者に面談の通知をします。ここでやっと、応募した本人が現れるので、どこのクラスの誰かがわかるわけですが、予めどのグループがどんな会社を設立し、募集を出しているかはわかるので、友人が応募する可能性は高くなるわけですが、選考側は、最後の面談まで誰かわからないそうです。

面談では、志望理由を中心に聞いて行くわけですが、どこで募集を見て興味を持ったか、我が社で働くとして、数年後のビジョンをどんな風に想像しているのか?あなたは、我が社にとって何をもたらしてくれるのか?など、本番さながらの質問をされるそうです。プレゼンに重きを置いているスイスの教育では、小学校から訓練されていることもあり、さすがに話すのがうまい生徒が多いようです。もちろん、中には人前で話す事が苦手な生徒もいますが、学校でのシミュレーションは良い練習になるようです。

採用、不採用通知をする

最終段階では、採用通知をします。不採用の場合は、その理由も合わせて応募者に伝えられます。相手を尊重しつつ、不採用に至った経緯や理由を伝えるのも、言葉を選ぶという意味では、よく考えて相手に伝える練習にもなります。(ただし、実際の不採用通知では、不採用の理由が応募者に告げられることはほとんどありません。)

このように5日間を使って、就活の疑似体験を生徒に経験させることは非常に重要です。生徒によっては、15歳で研修生として社会に出るわけです。もちろん、学校も通いながらになりますが、日本では15歳の生徒が会社に研修生として働くというのはいまいち想像がつかないかも知れません。義務教育は中学までですので、もちろん少数にはなりますが、中学卒業と同時に社会に出る子もいるでしょう。その前にやはりまだ子供という印象が強すぎて、将来の職業を考えている中学生など本当にごく一部でしょう。下手をすると日本は大学生でもまだ何を職業にするのか悩んでいる、わからないと言った人もいます。

いい面悪い面ありますが、スイスでは、3年から4年の研修を積んだ若者は、同じ年の日本の若者よりもずっと大人に見えますし、実際に物の考え方も大人です。将来食いっぱぐれないようにする、スイスの職業訓練システムの始まりは中学生から、いや、もしかすると小学校のプレゼン授業からすでに始まっているのかも知れません。