辛いものが苦手なスイス人と好きなスイス人

味覚の違い

本当かどうかわかりませんが、ある日本人の方が、「日本人は欧米人の何倍もの味覚センサーを舌に持っていて、それは子供の頃に細胞レベルで形成されるので、大人になってから訓練しても改善するものではない。」と話していました。

つまり幼少期の食生活で、味の濃いものばかりを食べていると味覚がおかしくなり、薄い味や微妙な味の違いを認識しなくなるということでした。確かに、こちらのメニューは相対的に味が濃いかもしれません。それはファストフードばかり食べている日本の現代っ子にもいえることです。例えば、日本特有の「出汁の旨味」は、日本人だと、味噌汁やスープに出汁が入っていないと、何か抜けた味がしてしまいます。しかし、一般のスイスの人は出汁が入っていてもいなくても、気がつく人はほとんどいないということです。

これは最近ブームのラーメンでも同じで、麺同様、スープが命のラーメンの出汁では、出汁を全く取っていないラーメンスープに遭遇することが欧州の日本食レストランではあります。日本人のように出汁を取らず、醤油や味噌のスープの素を入れただけという感じがするのは、そのせいでしょう。

旨味を追い求めて日本に修行に行ったスイス人の話

その旨味に注目し、日本の出汁の文化に興味を持ち、日本に渡航し鰹節作りから学ぶスイス人がTVで紹介されていたことがあります。かなり前の放送だったのですが、確かスイスの料理人の方で、日本でも数少ない手作りで鰹節を製造している家族経営の会社に行って作業をしていました。そこのご主人は、スイス人が出汁の旨味、鰹節の旨味に真剣に向き合っていると感動していたのを覚えています。

それを見たときに、前述の日本の人が話されていた、幼少期に経験していない味は欧米人にはわからないというのは、果たしてどこまで信憑性があるのかなと思いました。そのドキュメンタリーに出ていたスイス人は、旨味の違いに気がついて日本にまでいったわけですから、少なくとも彼にはわかっていた違いです。確かに、料理人を目指していろいろな味を経験することで、味覚は育つと思います。その過程で、日本の出汁や旨味というものに出会ったという印象でした。

日本人とスイス人では、間違いなく味覚は違いますが、個人差が大きいのも事実です。幼少期に食べていたものの味や匂いが強く記憶に残るのは知られていますが、味覚はある程度は大人になってからも変わるものです。子供の頃美味しいと思わなかったものが、大人になってから好きになることはあります。その意味では、味覚も鍛えられるのかなと思います。