東京オリンピックが終わり

閉会式では、次の開催地パリの市長に五輪旗が渡される

 東京オリンピックが閉会しました。スイス時間では日曜日の13時頃から、セレモニーの様子を放映していました。東京都知事から、オリンピック協会のバッハ会長、そして、パリの市長に五輪旗が渡されました。パリでも、エッフェル塔の前にたくさんの人が集まり、お祝いムードの様子が見れました。

 異例づくめの五輪だったといってもいい今回の東京五輪。コロナパンデミックがここまで長引くとは予想できず、1年遅れの開催。選手村から選手は出れず、毎日のPCR検査に加え、競技が終わったら2日以内に出国するという厳しい条件のもと、開催されました。それでも、多くのボランティアとコロナ対策にきちんと従った選手たちのおかげで大きな問題はなかったように思います。

 開催期間中は、選手村や関係者からコロナウィルス陽性の選手が出ましたが、全てのオリンピック関係者を入れて、50万人中400名程のコロナ感染者という数字です。欧州から見れば少ない数字ですが、日本のメディアでは連日の都内や日本全国の感染者増加のニュースが目立ちました。夏休みと東京五輪、ワクチンの接種の遅れなど、不安な要素が多くある中で、この数字はうまく感染対策ができたとスイスメディアでは見られているようです。

スイス選手のドーピング問題と差別発言

 ドーピングは、オリンピックの度にどうしても問題として注目されますが、今回は開催前にスイスの男子陸上選手が、試合期間中に接種してはならない成分のサプリを使い、9ヶ月の公式試合出場停止のニュースがありました。そして、その後も、別のスイス人男子陸上選手が、ドーピングテストに引っかかり、東京五輪へは出場できなくなる事態となりました。

 そして、自転車競技の際には、ドイツチームのコーチが自国選手に声をかける際に、前をリードして走る黒人の選手二人に対して侮辱的かつ差別的な発言をし、カメラの音声に声が入っていたため批判の的となりました。

馬術で馬への虐待問題と怪我

 また、馬術では、ドイツチームが、障害物を飛び越えれなかった馬に対して、策の脇からコーチが拳で馬を殴るという行為をした上に、騎乗の選手に対して、馬を本気で殴れ!と叫び、泣きながら選手も鞭で強く叩くという行為が問題視され、オリンピック競技においての資格剥奪、追放処分となりました。
この事件で明らかになったのは、馬が抽選で割り当てられるということ。普段から練習している馬を使っての馬術だと思っていたのですが、馬との信頼関係を作る時間もわずか20分。人間のようにトレーニングして、本番でちゃんと競技をこなせるかはわかりません。
 そもそも、競技に動物を使うこと自体が問題だとする人もいて、議論がわかれています。

 そして、今大会健闘したスイスチームでも、競技中に怪我をした馬が殺処分されるという悲しいことが起きました。普段から馬に接している調教師や騎手にとっても、大変ショッキングなことだったに違いありませんが、改めて、人間の都合でトレーニングされ、オリンピックのような大きな大会に出場し怪我をして殺処分とは、馬がかわいそうでなりません。
競技ではない、趣味の乗馬をする人にとっては、普段から馬の世話をして信頼関係を作り乗馬を楽しみます。ただ、五輪のような大きな大会に出る馬が、無作為に選ばれ、怪我をしたり殴られたりというのは、人間の都合でしかありません。悲しいの一言です。

五輪新種目では、若い世代が活躍

 今大会から追加種目となった、スケートボードやサーフィン、スポーツクライミング、空手、3×3バスケットボールなどがありますが、中でもスケートボードでは、男女ともに日本の選手がメダルを獲得しました。注目されたのは、その年齢です。12歳、13歳、19歳と10代の活躍が目立ち、ストリートカルチャーとして存在していたスケートボードらしく、若い子たちのスポーツという印象を強く残しました。

 スイスの有名なスケートボーダーという人が、TVのインタビューで、「スケートボードはカルチャーだから、スポーツという競技として入れるには違和感がある」と話していましたが、実際に競技を見てみると、テクニックが要求されるポイントがいくつもあり、競技として追加された意義は十分あると感じました。何より選手たちが心から楽しんでいる様子が、他の競技とは違い、失敗しても難しい技に挑戦したことを楽しんでいるのが伝わってきました。確かに、ストリートカルチャーとしても存在するスケートボードですが、ジャンルの違う競技のスケートボードとして今後も定着していくのではないかなと思いました。

日本が注目された2週間

 あっという間の2週間でしたが、日本が世界に注目された2週間でもあり、海外に暮らす日本人にとっては、未だ帰国の目処が立たない母国の様子をみる事ができて、うれしくもあり、寂しくもありました。スイスの人にどれだけ日本という国を知ってもらえたかはわかりませんが、興味を持った人も多くいたと思います。TVの画面を通して垣間見た日本へいつか訪れてほしいとも思います。そして、我々在外邦人が、ワクチンやコロナ検査、マスク無しで帰国できる日を渇望した2週間でもありました。皆さんは、どんな思いで東京五輪を見ていましたか?
忘れてはなりませんが、これからパラリンピックも始まります。まだもう少し日本の様子が見られるかもしれません。