あるレストランが強行開店した結果

飲食店のロックダウンが始まり

スイス政府が発令した、コロナウィルス感染防止策、飲食店のロックダウンは2月末までとなりましたが、各地で反対する人たちのデモは行われていました。そんな中、今日ベルンでは、あるレストランが営業して警察の介入がありました。お客さんも入っていたということで、警察がすぐに退店を求め、店主の女性に、従わない場合は飲食店の資格を剥奪すると警告しました。結局今日の騒動では、剥奪までは至らなかったようですが、かなり強い警告でメディアでも店主と思われる女性が涙ながらにインタビューに応じていました。

なぜ飲食店の営業停止命令の中、このレストランを営業させてしまったのか。各地で反対するデモも起こっているので、営業したい気持ちはわかります。しかしながら、このレストランの営業が原因で感染者が出て、さらには死亡者が出たらこの経営者の人はどう思うのでしょうか?自己責任では済みません。今回、見せしめ的な警察の対応で、他の飲食店の違法営業を抑えようという印象でしたが、非常に軽率と言わざるを得ません。

感染防止策やワクチンのニュースは連日聞くが

営業停止となったレストランには、政府からの保証もあり、従業員に関しては労働局からの時短金などが出ます。失業の場合は当然失業保険があります。しかし、経営者にとっては、事業に関する固定費などの補助が出るだけで、給与の保証があるわけではありません。売上の何割かを保証されても生活費までを考えた場合十分ではありません。経営者が独自に保険をかけている場合は別ですが、倒産でもない、失業でもない扱いで保証がない人もいます。

政府では、かなりの予算を計上し、こうしたケースにも策を練っているようですが、TVやネットで見るニュースは、ほとんどがワクチンの供給か感染数、予防策、次回の対策強化の話が主で、経済対策の話があまり聞こえて来ません。昨年末に救済基金の追加予算は決まりましたが、主に輸出をする企業向けの倒産を防ぐための基金であるため国内の飲食店やマッサージ店など、その枠から漏れる場合もあります。特にレストランは、テイクアウトやデリバリーで営業を続けているお店もあるので、全くの営業停止になっていないことも差が出ている理由でしょう。一方では、プロスポーツにも支援がされており、存続の難しいクラブなども救済の対象となります。

今回の感染症により、経済の仕組みが変わるわけではありませんが、何を優先するべきなのかの判断が非常に難しいところです。このウィルス感染症がどのくらいの期間続くのかは、まだわかりませんが、長期的に考えた場合は、2年とも言われています。ワクチンが成功すれば、もっと早いかもしれませんが、これもスイスだけの問題ではなく、世界全体の問題です。

人の移動が今回の感染拡大のネック

現代の社会では、人の移動がものすごく楽になり、LCCの登場で昔では考えられないくらいフライトも安くもなりました。その結果、経済状況が良くなった人たちが世界を旅行するようになり、ビジネスも一気にグルーバル化が進みました。しかし、感染症の場合は、それがやはり拡散のスピードを速めている理由になります。だからと言って、人の動きを止めるわけにもいかず(昨年からはかなり止まっていますが)、今後も人の移動が減るわけではありません。

人々の習慣も変わりつつある

コロナウィルスの感染拡大により、マスクが浸透したように、これからは生活の一部としてマスクは各家庭の買い置きするようにあるのではないかなと思っています。花粉症にも効果があるし、普通の風邪にも有効です。医療現場では、もちろん以前から使われているマスクですが、これほどまでに欧州でマスクが浸透することは予想できませんでした。手洗いも含め、そうした習慣づけもこれから変わってくるのかなと思います。スイスでは、友人に会う際は3回頬にキスをしますが、そういう習慣も変化していくのかもしれません。

最初に書いたレストランの件も、コロナウィルスがなければ、警察が店に介入するなんてことはなかったでしょうし、昨年までは考えもしなかったことです。ある日突然状況が変わると人はどう行動するのかということも、この1年で見てきた気がします。

とにかく、制限された世界から誰もが今年は抜け出せるように、知恵を絞って過ごして行くばかりです。