洗脳されていたスイスの友人

パートナーの言うがままに

友人は60代スイス人女性で離婚歴があり、8年くらい前からパートナーがいました。その彼は、既に定年退職していて離婚歴があります。

そんな二人ですが、過去に何度も別れては、よりを戻して、と言うことを繰り返していて、一時は彼女の方が精神的不安定になり休職しています。

世の中がコロナパンデミックになる直前、彼の方は病気で臓器移植手術を必要としていました。検査の結果、運良く彼女が臓器を提供できる事となり、コロナ禍に何度も延期された末に無事手術が成功。彼女も問題なく退院、復帰することができました。

彼にしてみれば、彼女は命の恩人です。

そんな中、彼女のお父さんが亡くなりますが、それをきっかけにパートナーの態度が急変します。親を亡くした彼女を労るどころか、手術後の自分の面倒や家事を優先するように命令するようになります。彼女は、仕事をしながら、葬儀後の手続きやお母さんの精神的なケア、兄弟との話し合いで忙殺されます。

そんな時にパートナーのサポートがあるどころか、さらに理不尽な負担をかけてくる彼に痺れを切らし、ついに別居を申し出ます。

それを聞いて彼は激怒。争いが始まってしまいます。

彼女の気持ちをうまく誘導しコントロール

過去に何度も別れていることは聞いていましたが、しばらくするとまたよりを戻している二人。

お互い年齢的にも、最後のパートナーだと思い、なかなか離れられないと言うのもあったようです。

喧嘩して別れた後に、巧妙に彼女の気持ちをコントロールし、やはり彼は必要な存在なんだと思わせるマインドコントロールが非常にうまかったようです。自分も会ったことがありますが、とにかく話がすごく上手。途切れることなく話す上に、随所で相手をうまく褒めます。

実際にそうした心理学のセミナーや講師をしていた時期もあるとか。

喧嘩して別れた後は、落ち着いた頃を見計らって、謝罪をし気持ちを揺さぶります。

興味深いのは、よりを戻す度に、彼は彼女に対して、何か新しいことをしたり、購入したりすることを勧めていて、最初は、オープンカーを買ってドライブする趣味を作ろうと言って、彼女にスポーツカーを買わせます。

また別の時は、彼女の飼っていた犬が亡くなり、もう飼わないと決めていたのに、良いブリーダーを紹介すると言って、子犬を買ってしまいます。

そして、最大の買い物は家です。

これまで同居はしていなかった二人ですが、何年か前に二人で暮らす決断をし、家を探すことに。実は彼女の実家は両親が不動産業を営んでいて、良い条件で購入することができたようで、彼には毎月家賃と言う形で払ってもらい、彼女が購入すると言う決断をします。

これらは、全て彼による提案で、それを断れない彼女が実行してしまっていたので、少し不安に感じてはいました。

自分もその家に招待されましたが、静かな環境で、すごく素敵なプール付きの家です。スイスでもいろいろなお宅を拝見してきましたが、個人的に一番気に入っているくらいです。

ただ、この時に思ったのは、もしまた別れるようなことがあったら、この家はどうするんだろうと言うことでした。

出て行ってくれない

彼女は自ら家を出て、しばらく身内の家に住まわせてもらうことになります。その間に、彼にはどこか転居先を探してもらって、出て行ってもらうことにしますが、なかなかうまくいきません。アパートを探そうともせず、居座り続けます。

彼はいわば借主で、大家は彼女です。一般的な賃貸のルールでは、期限までに次のアパートなり住居が見つからない場合は、家賃を支払っている限り、強制的に退去させることができないそうで、ついに弁護士に頼むことに。

彼女の家族が不動産業を営んでいることもあり、その辺は彼女が有利でしたが、弁護士からの手紙に彼はさらに激怒して、理由をつけて居座り続けようとします。

彼女も生活に必要なものを取りに帰りたいのですが、彼が自宅にずっといるので、怖くて入れず、付き添いを連れて必要なものを取りに行く感じになります。

直接会話することも不可能になった二人は、弁護士を通してのやりとりになります。

書留の封書が届き

そして、彼女に書留書類が届きました。また悪い知らせだろうと思って開けると、ついに彼の退去が決まったと言うことで、緊張の糸が切れたかのようにホッとしていたそうです。

一時は購入した家を売りに出そうとしていた彼女ですので、良い知らせではありました。

しかし、まだまだ過去の経緯から、安心というわけにはいきませんが、今回は彼女が自分自身、彼に洗脳されていたんだと認識したことで、もう2度と戻らないと話しています。

退去するまでの間、家に何か仕掛けていないか、仕返しや嫌がらせが起きないか心配です。

周囲からは、家は売って、彼の知らないところへ引っ越してしまった方が良いと言われているそうですが、そう簡単ではありません。

これまで、自分の指示することを全て実行してきた彼女が、一切聞く耳を持たない状態になって、困惑している様子だったそうです。

 

それにしても、彼は臓器移植のドナーにまでなってくれた彼女に対して、なぜ、そこまで酷いことを言ったり、恨んだりできるのか不思議でなりません。命の恩人である上に、出て行ってくれるのなら、引越し費用なども出すと言ってくれたのに、歪んだプライドが許さなかったのでしょうか?

人が洗脳される姿を垣間見て、また、洗脳する側の人間も壊れていく様子を聞いて、恐ろしいなと思いました。

夫婦もそうですが、実際の気持ちや微妙な距離感は当事者同士しかわかりません。

彼女には、新しい生活がうまく行くように願いたいです。