イタリアで初の女性首相誕生も

極右政党の勝利

スイスでも大きく報じられた、イタリア初の女性首相、ジョルジア・メローニ氏ですが、彼女の政党はイタリアの同胞(FDI)で極右政党。保守的なイタリアで女性の首相とあり、話題になっていますが、スイスもEUもこの結果に大喜びしている印象はなく、少し冷ややかな目でみている感じです。女性版ムッソリーニの再来などとメディアでは言われました。

このEUの主要国であるイタリアが、またロシアからガスを買いたいなどと言い出して、足並みを揃えないと言う事態になると、ロシアに対する経済制裁を含めて、EUの基盤が崩れかねません。既にEU加盟国のハンガリーが、ロシアから天然ガス輸入を増やすと合意していますので、イタリアも燃料高騰対策のために、同じことをするかもしれません。

ル・ペン氏を選ばなかった、フランスとの違い

このメローニ氏が勝利宣言をすると、すぐにフランスのル・ペン氏が祝福したそうで、同じ女性の極右政党の立場でアピールをしたことになります。大きな違いは、ル・ペン氏は女性首相としては選ばれなかったことです。

両氏とも、極右政党所属で、移民反対の立場で思想はよく似ています。EUの主要国としても重要なポジションですが、フランスの人たちはマクロン首相の続行を望みました。

それは、マクロンがEUとの関係強化を優先したからでしょう。現在、世界を翻弄するコロナパンデミックとロシアのウクライナ侵攻で、不安定な世の中です。ブレグジットでEUを離れたイギリスを見て、フランスがEUとの関係を無視してやっていけるとは思っていないことの表れです。

EUに懐疑的なル・ペン氏は、提案した経済政策でもあまり良い評価をされなかったことも支持をされなかった理由でしょう。

経済や正常の不安定な状態が続くと、大抵の国で右傾化が進みます。それをうまく利用して政権を取ろうとしますが、問題は政権を握った後の運営と経済対策、外交など、課題は山積みになるので、それをこなせる人物とブレーンが重要となってきます。

女性の首相も増えつつあるが

欧州では、ドイツのメルケル氏を始め、フィンランドのマリン首相など、女性の首相が誕生しています。これからメローニ首相の政策がどんなものなのか、欧州も注視していくことになりますが、女性首相だからといって、女性の権利や社会での活躍の場を広げるような政策はしないと見られています。彼女が勝利宣言をした際に舞台に上がっていたメンツを見れば明白です。かつての首相ベルルスコーニ氏が、壇上で万歳をしていたのがそれを表しています。

せっかく若い世代(45歳)の女性政治家が国の舵取りを任されるのに、表向きの良さそうな印象だけで、実際は極右政党の思想のままですので、性別に関係なく女性の権利が向上する見込みは低いです。あまり影響のないところでの女性の権利改善はあるかもしれませんが、世界的に見ても右寄り政党の政策ではありません。

それでも、日本と違い40代の女性が首相になれる国という点では、少しだけ羨ましく思います。

女性の権利、格差

世界がウィルスや戦争に翻弄されているなか、女性の権利も蔑ろにされています。アメリカのテキサスなどでは、望まない妊娠を含む中絶禁止の法律を可決しました。アメリカの場合は、各州の権限が強いので、その決定も異なりますが、明らかに女性の権利を剥奪しています。

イランでは、宗教的なヒジャブを着用していなかった22歳の女性が拘束されて死亡し、暴動が起こっています。イスラム教のもとでの女性の尊厳や権利は軽視されています。

ここスイスでも例外ではなく、こうしたイスラム女性の厳しい宗教的規律違反のために、親族から殺されるような事件は起きています。スイスもまた、2009年の国民投票において、新たな宗教施設、ミナレット建設を禁止するイニシアティブが可決されています。当時は、過激派のテロ行為が頻発していた時期でもあり、国民の不安を解消する形で議題に上がり、結果賛成が上回るという、世界的にも大きな反響を呼びました。

もちろん健全なイスラム教とテロ組織は別のもので、区別しなければいけませんが、多くの国民のイメージとしてそうしたテロ国家のイメージがついてしまった結果でもあります。

スイスは、女性の定年を65歳に引き上げ

そして、先日の国民投票でも、女性の定年退職の年齢を男性と同じ65歳にするというイニシアティブが僅差で可決されました。これについても反対の立場を示していたグループは、女性差別だと主張していましたが、定年の年齢の前に、同じ職種の男女給与格差、年金受給格差などを是正する方が先だという声もありました。

確かにその通りで、年金受給は前倒しして63歳から早期の受給をすることも可能ですので、定年の年齢とは関係なく、年金受給は可能です。しかしながら、その受給額が減ることも踏まえて、男女感の格差を無くしていくことがこの先重要になってくるのではと思います。

今回の女性の定年を65歳とするのであれば、将来的に67歳、70歳と上がっていくことも当然予想されます。それに準じた年金受給額と給与の男女間格差も縮めていくことが、次の世代の課題なのでは、と思います。