防犯カメラの少ないスイス

思ったよりも少ない防犯カメラ

空き巣のニュースは、スイスでも度々聞きますし、特に珍しいことではないのですが、当たり前になった防犯カメラの少なさに驚いています。これは以前から思っていた事ですが、例えば公立の学校でも防犯カメラはあまり設置されていないようです。(地域によります)

先日の祭日に、休日出勤した知人が、オフィスの窓枠が壊されているのを発見し通報しました。場所は1階のオフィスで、窓の周辺の木枠をバールのようなものでこじ開けて侵入。幸い、書類棚などは鍵がかかっていて盗られたものはなさそうだという事ですが、通りに面したオフィスで大胆な犯行です。休日を狙ったのは間違いなさそうです。

警察立ち会いの元、指紋などを採取していったそうですが、防犯カメラはありません。メインの入り口も自動ドアをこじ開けようとした痕跡があり、おそらくプロではないだろうという事ですが、メインの入り口にカメラさえついていれば、犯人の追跡ができたかもしれません。

カメラ設置とプライバシー

スイス人は、どうやらプライバシーを気にする傾向があり、職場でのカメラの設置許可が出なかったりするケースが多いようです。つまり、勤務中に監視されている気がするという事で、誰がどの時間帯にサボっているのかとか、喫煙者は頻繁にタバコを吸いに休憩しているとか、プライバシーの侵害になると考える人が多いようです。場合によっては、そうしたカメラの映像を元に、上司がサボっている社員を解雇する可能性まであるという人がいます。

しかし、防犯カメラであって、社員監視カメラではないはず。それに、防犯カメラ設置の規定では、犯罪があった場合に限って、警察立ち会いの元映像の記録を確認するというのが普通です。つまりそれ以外の目的で勝手にカメラの映像を見ることはないはずです。通常は、古い映像は上書きされて消されるので、先月サボってタバコを吸っていた映像も無くなるわけです。それでも、人目を気にしすぎるスイス人のようです。

人目を気にするが、人を監視するスイス人

矛盾しているようですが、監視されるのを嫌うスイス人も人を観察するのは好きなようです。職場でも家でも、周りの人が何をしているかはよく把握していて、ご近所の誰々さんがこんな夜遅くに帰ってきたとか、来客がうるさいとか、常に監視されています。そして、それを直接その人に伝える傾向があるのには驚きます。シャイなスイス人は黙ってみているだけではありません。文句があれば、面と向かって言ってしまいます。

ドライブレコーダもグレーゾーン

事故の際の証拠に、ドライブレコーダーを取り付ける人は多いと思います。日本でもほとんど当たり前の装備になりつつあり、ドライブレコーダがあったおかげで、当て逃げやひき逃げ、煽り運転の加害者が捕まったケースも多いです。しかし、スイスでは、前述のような事情で、このドライブレコーダーもグレーゾン。事故を起こして、警察に映像を提出しても、有利には働かないようです。ひどい場合には、許可なく勝手に映像を撮影したとして、事故の相手から訴えられたりする可能性もあるそうです。

その逆で、自動車事故で自分に非がある場合、ドライブレコーダの映像を提出する義務はありません。自分に不利な映像が残っているのであれば、出す必要はないという事です。よっぽどの凶悪事件とか、操作が必要な大事件でもない限り、提出義務はないようです。それはそれで、一応フェアなのかもしれませんが、事件や事故の解決には映像の証拠は効果があると思います。それでも、プライバシーを尊重するスイス人が多いので、なかなか防犯カメラも浸透しないようです。

スイスの場合は、各自治体レベルで規定が違ったりしますので、国全体で統一されていないルールも多くありますので、注意が必要です。