半導体不足の世の中

半導体の不足に苦しむ自動車メーカー

半導体の不足など、自分には関係ない、ピンとこないという人もいるでしょうが、様々な生活必需品の中に既にたくさん使われています。

例えば、スイスでも新車購入の場合、納車がこれまで以上に遅れているというニュースを見たことがある人も多いと思います。実際に、自動車メーカーの人と話をした際も、納期が遅れていて、逆に中古車がよく売れているということでした。

そもそも半導体は、自動車だけでなくあらゆる家電製品に使われていて、スマートフォンやパソコンなどは小型の半導体が使われています。コロナパンデミックで工場が閉鎖になったり、納期が遅れたことも不足の理由ですが、半導体業界ではチップの小型化が進んでいて、車に使われるような古いタイプの大きなチップはいずれなくなるだろうということです。

自動車の様々な箇所に使われる半導体は、45~90nmプロセスのチップですが、スマートフォンでは、5nmプロセスのチップですので、その差はかなり大きいです。つまり、製造過程において同じプレートで、一度に生産できるチップの数が小さければ何十倍にもなるわけで、半導体メーカーとしては、今後小さなチップをたくさん作って生産効率を上げたいわけです。

古いタイプの半導体を求める自動車メーカー

これからは電気自動車の時代が来ると言われていますが、テスラ社などは独自の半導体チップを開発しています。自動車にも当然半導体は使われています。例えば、電気自動車でなくても、パワーウィンドウの制御にも半導体は必要です。ただし、自動車とスマートフォンでは、耐久(使用)年数に差があります。ゲーム機やスマートフォンなどの電化製品は、数年経てば古いものとなり、買い換える人が多いです。何十年も同じスマートフォンを使う人は稀でしょう。一般電化製品の中でも、製品サイクルが短い部類です。

しかし、自動車を購入する人は、数年で買い換えるという考えの人は少なく、最低でも10年は乗るというユーザーが多いので、一般家電とは製品寿命が少し変わってきます。今はまだ壊れやすい不安定な最新型の半導体をチップを自動車には使えないということです。

スマートフォンであれば、何か不具合が生じても再起動したりソフトウェアのアップデートをしたりして、復旧が可能ですが、コンピューター制御になった自動車では、走行中に不具合が生じた場合は、直接事故につながる恐れがあります。そうなるとまだ不安定な高精度の小さなチップよりも、実績のある従来型のチップの方が安全面からして自動車には(現時点では)向いているということになります。

しかし、それとは逆行して、半導体メーカーは、工場の閉鎖や古いタイプのチップの生産をやめてしまう工場もあり、最新の小さな半導体チップの製造を優先していく傾向にあるようです。

コロナパンデミックでのアジア工場の生産縮小、物流の延滞、市場縮小などの様々な要因が重なり、今の半導体不足につながっていますが、半導体不足が急に起きたことではないということです。

いずれは最新の小さな半導体チップに

ただし、半導体チップの需要は電気自動車の参入もあり今後更に増えていくでしょう。そうなると、メーカー独自のチップ開発になるか、半導体メーカーに専用のチップを設計してもらい生産をしていくのか、何れにしても自動車や他の製品に合った新しいものになっていくことは間違い無いでしょう。現在はちょうどその変化の時で、何年かかけて移行していくと思われます。

自動車業界だけでなく、他の工業製品もこうした影響を受けていて、納期に間に合わないケースも多く、企業が年度内に必要な設備のための購入を見合わせるということも起きています。

こうした状況はもう少し続くと見られていて、特に自動車業界では、前述の通り、中古車市場の動きが活発になっているということです。