東日本大震災から9年

東日本大震災から9年

世間はコロナウィルスで騒いでいますが、今日はあの東日本大震災から9年です。もう9年が経ったとは信じられないくらい、ついこの間のように思えます。
あの日は、徐々にわかる日本の状況と家族の安否を確かめるべく、メールやスカイプでやりとりしたことを覚えています。
そして、大地震で起きた津波により破壊された福島原発。これも未だに使用済みの燃料棒が回収できずそのままですが、これに関するニュースはほとんど聞かなくなりました。

欧州では環境は大きなテーマに

この状況とは裏腹に、欧州では環境保護が頻繁に議論され、昨年はスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが国連で演説し話題となりました。
原発の停止期限や自動車の排ガスを減らすために、フランスのパリ市内を近い将来ディーゼル車が入らないようにするなど、環境をテーマにしたニュースはよく聞きます。
豊かな生活を送るスイス人も休暇や仕事で飛行機を頻繁に使います。飛行機のガソリンは、空中に撒き散らされ、飛行場の近い住居エリアでは、騒音とともに窓やカーテンの汚れがひどいのも本当です。

東京五輪の話が出ると、多くの人が福島のことを聞く

日本に話を戻すと、今年は東京オリンピックの年です。このことは多くのスイス人も認識していますが、ほとんどのスイス人に聞かれる、「福島はもう大丈夫なのか?
オリンピックをやれる状況なのか?」という質問。
欧州の人は、やはり普段からこうした環境問題のニュースを目にしているだけあって、忘れていないのだと思いました。福島の問題はまだ終わっていないというと、やっぱそうか、という風に落胆しますが、彼らが頭の中で思っていることは、放射能が飛散している地域はどの変だろう?ということです。オリンピック種目のマラソンは、東京から札幌に変更されましたが、それは東京の夏が暑すぎるから選手にとっても危険、という理由でした。原発事故の放射能のことには触れていません。
震災後、日本への観光旅行需要も復活して、日本全国の観光地が賑わっているニュースを目にしましたし、スイスのTVでも日本の文化や流行を伝える番組が増えてきて、原発事故は過去のもの、という雰囲気でしたから、彼らの質問には、正直ドキッとしてしまいました。
ニュースのトピックに上がらなくなったから、解決したわけではないのだと改めて思いました。

大震災、災害から学ぶもの

現在は日本を含め、世界中がコロナウィルスに振り回されています。日本も危ない国という認識でしたが、ついに欧州にも拡散され、イタリアでの感染拡大とともに、スイスも危険渡航地域の1に指定されています。
現在は人の動きが世界で止まっている状況です。環境的には、飛行機が飛ぶ回数が減っていいのでしょうが、経済的には大打撃です。そもそも、外出などの動きすら規制されてしまうと生活への支障も出てきて、トイレ紙の買い占めなど、おかしなことになってきています。こうした状況になって、人々は何を学ぶかというのは、非常に大事なことです。

現代社会で、環境を全く汚さずに生活している人など一人もいないはずです。環境デモなどを行うと、それは極端なアピールをしますが、実際には、皆さん、ちょっとした心がけをしましょうということなんだと思います。「環境のために色々規制して、経済的損失は誰が責任を取るのか?代替え案はあるのか?」などと、反対する人たちもいますが、それでは議論になりません。
ただ、双方に矛盾があっても議論になっているのはまだいいことで、一番いけないのは無関心です。

東日本大震災をスイスから見ていて、多くの在外邦人が心を痛めました。被災どころか日本にすらいないのに、自分自身の価値観も変わってしまった出来事です。
震災直後から、普段はネットで視聴できないNHKの放送を1ヶ月間観ていましたが、放送期間が終わった後は本当に疲れてしまったのを覚えています。
スイスで募金活動に参加することが精一杯でしたが、故郷が津波に飲まれる映像を見て、何もできない悔しさを話してくれた人もいます。
9年経っても、当時の映像は目に焼き付いていて、更には原発の事故も起こり、本当に大惨事だったのだと改めて思います。

現在のコロナウィルスのパニックは、なぜか9年前の東日本大震災の雰囲気と似ている気がします。こうした危機が訪れるたびに、人はどう対処すべきかを試されている気がします。
犠牲になった方々のご冥福をお祈りし、自分自身の生活を見つめ直して今後も行動したいと思います。