国民投票、外国人犯罪者の国外追放案

昨日行われた国民投票では、4つの議題があげられ、最も注目を集めた一つが、外国人犯罪者の国外追放強化案である。
すでに2010年に可決されている法案だが、実際に外国人犯罪者に対して、きちんと遂行されていないという意見が出て同法案の強化をイニシアティブにかけた。

国民投票の結果、58.9%で否決された。

欧州には大量の難民が押し寄せており、ドイツでは難民の施設を狙った焼き討ちや難民と思われるグループによる集団暴行事件などの影響で、国民感情がかなり左右されるのではないかと危惧されていたが、スイスの国民はこの案に対して冷静に判断したと言えるだろう。
スイスにも難民は押し寄せていて、ドイツほどではないが、アフリカ系の難民家族も多く受け入れている。
もともと難民受け入れには寛容なスイスだけに、今回の法案強化も、人権的な観点に基づいて判断した人が多いように思う。
ただし、前述の難民問題をはじめ、難民、外国人の大量受け入れには反対の人も多い。

スイス国内の外国人比率は2割を超えているので、この結果に安心した人も企業も多いと思う。
もちろん、ほとんどの人が犯罪とは関わりのない生活を送っているが、何かの間違いでビジネス上のトラブルで問題が生じて犯罪者になってしまった場合に、スイス人と結婚している外国人の家族は引き裂かれることになる。(軽犯罪では10年以内で2回犯した場合、国外強制追放となる。)

その他の議題は以下の通り。

ゴッタルド第2トンネル建設案
57%で可決
*老朽化が進み、2車線のみの狭いトンネルのため事故も多いのが理由。

結婚した夫婦に対する税制イニシアティブ
50.8%で否決
*結婚している夫婦の方が、同棲しているカップルより税金が高いため、その公平性を求める議題。年金受給においても差が生じているが、否決された。

食料に関する投機禁止案
60.5%で否決

*スイスにある金融機関が、食料関係の金融商品に対して投資を禁止するという案。投資をすることにより、市場に左右され、食物の価格が急激に上がり貧困層を増やしてしまう可能性があるため、止めるべきとの案だったが、スイスに本社を置く食料関連企業からの反対が強かった。

今回の国民投票は、投票率が63%と24年ぶりの非常に高い投票率となった。