葡萄自体は人類の文明以前に既に広範な地域で繁殖していたらしい。そ
の葡萄を発酵させて飲み物を作ったというのがワインの始まり。飲むと
酔っぱらうから命の水とされ、特別な儀式などで飲まれたらしい。ま
た、薬としても用いられた。

原始的なワインはどぶろくみたいなもので、それにオリーブオイルやハ
チミツ、はたまた海水までを加えて飲んだらしい。今のワインとは全然
違う。エジプト文明が栄えた頃に、ようやく透明なワインが造られ出し
た。ギリシャ人もワインが好きだったが、この様な混ぜものワインにと
合わせて、生タマネギなどを食べていたそうだ。当時の食文化はかなり
辛口嗜好だったようだ。(まだ砂糖のない時代なので仕方がないといえ
ば仕方がない)
この時代のワインを復活させたワイナリーがある。残念ながらフラン
ス・ローヌ地方のワイナリーだ。
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ローマ時代になると現代のワインに近いものが作られる様になる。紀元
前121年は空前の当たり年で、この年を境に混ぜものをしないワイン
が飲まれるようになったという。ローマ人はワインの醸造に改良を加
え、発酵の温度管理や木樽による熟成などを開発している。現代ワイン
の原形はローマ時代に築かれたのだ。

この当時スイスはまだ国として存在していなく、ケルト人の住むガリア
という地方の一部だった。ローマ人はガリアの征服を進めると共に、こ
の地域にワイン文化をもたらした。これがヨーロッパにワインが伝わる
第一歩となった。

ドイツとスイスの間に横たわるボーデン湖の遺跡から古い葡萄の種が発
見され、トイトニカという野生葡萄品種だとわかった。これは4~5千
年前のものとされている。このトイトニカはかの有名なリースリングの
原種なのだが、実際その時期のケルト人はワインを造らず、ただ葡萄
ジュースとして飲んでいたようだ。

ローマ時代に今のスイスの領土に住んでいたケルト人、ヘルベティー族
は、こうしてローマ人の影響によってワインをたしなむようになって
いった。この頃をガロ・ローマ文化と呼んでいる。

ローマの初代皇帝アウグストゥスは北イタリアの優良葡萄を南スイスや
南チロルに移植している。このアウグストゥスが最も好んだというの
が、イタリア・ロンバルディア州北部、スイス国境に位置するヴァル
テッリーナだと言われている。今日の南スイス、ティチーノもローマ時
代の影響を今に伝え、優良なワイン産地となっている。