3月に東日本を襲った大震災と津波は、大きな傷跡を残し、5ヶ月が過ぎた。この大災害は、原発事故も引き起こし、日本のみならず、世界中を議論の渦に巻き込んだ。ここスイスでも、5基の原発を所有し、反原発の運動に拍車をかけて、2034年までに原発を停止するという閣議決定を出した。近隣国では、ドイツ、イタリアが同じように停止の決定をしている。

 しかし、この閣議決定後のスイスでは、あまり日本の状況を耳にする事がなくなった。それでもラジオでは1日1回は福島という地名を耳にするが、あまり大きな関心にはなっていない。原発停止の閣議決定をした事で、一定の目標は達成したためだろうか、日本の大災害への関心は薄れつつある。
 これは、被災者のための募金活動の動きにも見られる。震災直後はスイスでも各地で草の根的に行なわれ、更には元々の日本のイベントを急遽変更して、被災者のためのチャリティーイベントになった大きなものまである。しかし、今ではそのピークも去り、チャリティの数も減りつつある。

 ある人の話しでは、この震災後に日本企業がスイス企業を買収したり、日本人観光客がハイクラスのホテルに泊まって観光していたりしたため、一部のスイス人は、お金がある日本人なのに、なぜ募金活動なんかしているのか?と疑問を抱いた人もいるそうだ。スイス人からすれば、日本よりアフリカの飢餓に苦しむ子供のために募金をするというのが心情のようだ。
もっとも、経済活動と被災者の支援は、別の話しではあるし、むしろ日本の経済が盛り上がって来ない事には、復興の道もまた遠くなる訳で、その辺の認識には温度差があるように思うが、仕方ない。
 結局のところ、スイスにいる日本人が日本人から支援金を募る事で、各地のチャリティは今後行なわれて行く事になるだろうと予想できる。

 日本の状況に目を向ければ、国内は政局一色。復興に向けての対応の遅れが目立つ上、放射線汚染の被害も食品までに及び、何を口にしていいのか、目に見えないだけあって、食生活にも不安が広がっている。特に妊婦や子供の場合は、注意が必要と多くの識者も言っているが、実際に別の地域に引っ越したり出来る人は少ない。

 国内経済も震災前に既に低迷していた訳で、震災により更に大きなダメージを被った。放射線の被害で、東北地方の工場なども被害を受け、国内経済も低迷し円高に。このまま円高が続けば、工場などが海外に出て行ってしまう。既に、2、3年以内に工場の海外移動を検討している企業は多い。これではますます、日本の産業の空洞化が進み、東日本の復興とはほど遠い状態になりかねない。こうした有事への対策を考えるのが政治の役割であるはずだが、前述したように政局一色だ。

 今年も後4ヶ月あまり、被災地はどのような思いで正月を迎えるのか。それまでに少しでも復興への展望が見えて来るのか。国内のみならず、海外へ出ている日本企業の経済活動にも影響が出る大きな事だと認識した上で、政治を考えてほしい。
必ず復興出来るという、希望、目標があれば、力も湧いて来るはず。それを導いて行くのが、その国の政治の役割ではないだろうか。