認知症で忘れてしまう第2言語

多国籍の介護現場

介護現場では、様々な国籍の人たちが従事しているが、特にスイスでは、入居者も外国人比率が高く、かつて移住してきた外国出身の高齢者も多い。

例えば、かつて建設現場の労働力として多く移住してきたイタリア系の人たちは、現在高齢者となっているが、介護現場で働く人から聞いたある話がある。

それは、イタリア出身の入居者が、認知症を発症してこれまで問題なく話してきたドイツ語を忘れてしまったということだ。

幸い、介護する側にもイタリア語が堪能な人やイタリア出身の2世の人もいるので、対応はできているが、50年近く仕事でも生活でも使ってきた言語を忘れてしまうと聞いて少し驚いた。

特にアルツハイマー病では、第2言語を喪失してしまうケースが多いようで、幼少期と強く繋がっている母国語だけの意思疎通になる。

もちろん、言語は関係なく意思疎通自体が難しくなるケースが多いだろうと思うが、日本語のようなマイナー言語はどうなるのだろうとふと思った。

 

スイスに住んでいる日本人は、ドイツ語やフランス語を習得して仕事や日常生活を送っているが、現地語を忘れてしまうようなことがあると、日本語のできる介護士やヘルパーさんは限られてくる。

特に医療現場では、自分の体の症状を外国語で伝えるという難易度の高いコミニケーションをしなければならない。

それが高齢化して、うまく話せなくなるのは自然なことだし、母国語でもきちんと伝えられるのか不安だ。

食事も大きな障壁

言葉と同時に、現地の食事も受け付けなくなる場合も多いそうだ。

特に外国出身の人は、家庭では自国の料理を食べることが多いので、介護施設で出される食事に馴染めなくて不満が多い。

介護施設で、自分だけ日本食を頼むこともできない。

特に日本人は、スイス在住でも自宅で料理して食べてきたものは、日本食が多いと思う。

高齢化すれば、スイスの胃に持たれそうな味の濃い重い料理を食べるのも負担になる。

歳を取れば取るほど、味の濃い食事が辛くなる。

日本の介護施設であれば、味付けこそ違えど、食べ慣れたメニューがある。

海外生活のストレス

海外在住歴が長くなれば、言葉や習慣も覚えて、問題なく日常生活を送る人が多いと思うが、それでも現地のスイス人のように完璧ではない。

スイスジャーマンのような方言を含めた現地語を流暢に話しても、相手に外国人と思われて対応されるとストレスに感じることも多い。

自分では現地に馴染んでいるつもりでも、相手が受け入れていないと思うと気疲れする。

逆に相手が自分をスイス人扱いして話しかけられても、スイス人と同じような反応はできなかったりするので、それもストレスになる。

やはり、第2言語で自分の意思を完璧に伝えられないことにストレスを感じるように思う。

細かいことをあまり気にしない性格の人なら、うまく折り合いをつけてやっていけると思うが、そうして習得した言語を認知症で全て失ってしまうのも悲しい。