2009年は、その数ヶ月前に起こった経済危機で、不安の幕開けとなった。その不安を希望に変えた、オバマ大統領の就任。黒人初の大統領として、アメリカ国民の期待を背負った人物である。知的で品のある語り口は、多くの人に新しいアメリカという印象を与え、経済危機に立ち向かう姿勢も評価された。そして、プラハでの歴史的とも言える演説。核無き世界を訴え、混沌とする世界情勢の中、希望の光を与えただけではなく、唯一の核使用国の代表として表明した意味は大きい。そして、就任1年目にしてノーベル平和賞の受賞。受賞については時期尚早との意見もあるが、世界の人々の大きな期待がそこにある。

 日本でも、政権の交代が実現した。古い政治から脱却、そして、この不安な時代において、まさにアメリカがオバマ大統領に希望を託したように、日本国民も新政権に希望を託した。この時期においての船出はなかなか厳しいものがあるが、早速国民の期待するところとは別なところで、問題が起きている印象を受ける。国民不在の政治にならないように、しっかり舵取りをしてほしい。

 一方スイスでは、来年の大統領がドリス・ロイタルト氏に決まった。全州議会の議長にはエリカ・フォルター氏、国民議会議長には、パスカル・ブルーダー氏が選出され、いずれも女性が重要なポストについた。今年は日本とスイスの経済連携協定(EPA)も締結され、経済相のロイタルト氏が尽力した。両国間の貿易に大きな影響を与えるもので、一般の人の関心も高く、スイスの対外的な政策としても非常に重要な協定である。

 また、今年はスイスの銀行守秘義務がアメリカをはじめ、各国のターゲットになり、経済危機下において厳しく追求された。求められていた情報開示、守秘義務の廃止は免れたが、この件ではお隣ドイツも敵に回した。また、最近では国民投票にかけられた「ミナレット建設の禁止」では、建設禁止の結果に、イスラム諸国はもちろんのこと、スイス国内、欧州諸国にも波紋を広げ、バッシングを受けた。国民投票の結果の前に、議題として果たして適正であったか問題視する評論家も多い。
 他にもリビア・カダフィ大佐の息子が起こした不祥事による逮捕で、両国間の関係に亀裂が入り、この事件は異質な件ではあるが、スイスにとっては敵を増やした1年だったように思う。

 そして、秋から本格的に流行し出した新型インフルエンザ。全世界で感染が確認され、正体の分からないウィルスに人々は不安になった。ワクチンもスイスでは一人2回分を確保し、万全に備えたが、ワクチンを受ける人が思いのほか少なく、感染のスピードが予想より早かった。当初、疑いのある患者はすぐにタミフルなどの薬を投与し、隔離までされた患者もいたが、健康な人であれば軽い症状で済んだ人も多く、12月に入ってからはピークが過ぎたとされている。しかし、まだ冬は始まったばかりで、今後の季節性のインフルエンザや強毒性の鳥インフルエンザには注意したい。新たなウィルスの変異なども否定は出来ないので、今後も心配ではある。

 2010年はどんな年になるのか。この不安な2009年を何とか終え、昨年の今頃思っていたような不安は多少緩和されたような気もする。新しい年に向け、皆さんは何を期待され、どんな1年にしたいですか?