スイス人の隣国での買い出しに影響。関税率大幅変更を議論。

国境周辺に住むスイス人には大きな変化になる可能性

ドイツやフランスに買い出しに行くスイス人は非常に多いわけですが、これがスイス経済にマイナスだという話はもう何年も前からあります。ここにメスを入れようとスイスのFDPの議員が、現在300フランまで非課税となっている規定を50フランまで下げるという提案を国会に出しました。

この提案に対して、国境側の人は否定的な意見です。大きな額の買い物をした場合は、当然スイス側での申告が必要ですので、税関で購入したもののレシートと場合によっては商品の確認をし、その場でスイスの消費税を支払います。この作業が、単なる日用品の買い出しに適用されるとなると、税関職員の負担が大きくなることは容易に想像できます。そして、人員を増加させるでしょう。

何度でも行くというスイス人。価格差が問題。

買い出し客にインタビューしていましたが、非課税額が変わっても、この辺に住んでいる人たちは変わらず行くでしょう。50フランがリミットなら1日に何度も行き来して買い出しするだろうから意味はないだろう、むしろ人の往来が増えて、近郊は渋滞し、迷惑するようになるのでは?とのこと。

つまり、非課税の額を下げても、直接的にスイスの経済にお金が戻るようなことはないのでは?ということです。問題は、非課税額ではなく、同じ商品の価格差にあります。場合によってはスイスの販売価格の3倍もする商品がありますので、関税対象になっても、ドイツやフランスで買った方が十分安いため、スイス国内でその商品を買うことにはならないでしょう。

確認作業も困難に。税関は長蛇の列に。

おそらく、この関税額の変更がされても、税関職員が全てを確認するのは難しいと思います。申告せずに通り過ぎる買い物客は絶対に出て来ます。また、友人や家族が協力して、50フランづつ買い物をすれば課税は逃れますので、そういう生活のためになることなら、面倒でもする人はいるだろうと思います。

50フランと言うリミットは、隣国に買い出しに行く人ならほとんどの人が超えてしまう額。そうなると、ほとんどの人や車を停止させて、買い物した商品とレシートをチェックすることになります。トラムやバスでもチェックがあるのでしょうか?そう考えると現実的には難しいかもしれません。

仮にスイスからの買い物客が、税関に申告に来たとして、連日長蛇の列になることは間違いないでしょう。普段からドイツ側の税関でも、税金還付のためのスタンプをもらうスイス人で溢れている状況ですので、彼らがそのままスイスの税関に来ると言うことです。

荷物の受け取りも

国境側ビジネスも色々ありますが、昨年からのコロナパンデミックで、ドイツやフランスの大型スーパーも大打撃を受けました。今年は国境を封鎖せずに、スイス人の買い物客も受け入れている状況です。ドイツやフランスのお店にとってもスイス人は大事なお客さん。それをスイスの側から規制をかけられるとなると、もどかしいところです。

国外の買い出しに依存しないことが大事ですが、一度始めてしまうと習慣づいてしまいます。知人のある4人家族もスイスのスーパーでほとんど買い物をしないそうで、週末ドイツに買い出ししているとか。そうした家族にとって、昨年のロックダウン、国境封鎖は変化を求められた時期だったでしょう。そして、この関税率の変更議論も無関係ではありません。コロナパンデミック以来、生活スタイルが変化して行くのを感じている1年半です。