スイス人の休暇、働き方、生き方

スイスの夏休みも残りわずか。学生は新学期、家族も通常の生活に戻る。
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スイス人は休暇のために働く。スイス人に限らず、欧州の人は皆そうであるように、年間の休暇スケジュールを大体決めて、各部署の同僚との調整をする。
子供がいる社員は、子供の夏休みに合わせて休暇取得し、独身者はこの時期を譲って、学校の夏季休暇前か後に長い休みを取ったりする。
1年先の休暇を決めているスイス人を見て昔は驚いたが、年間4週間から5週間の休みがあるスイス人は、そうしないと職場にも迷惑をかけてしまうということだ。

休暇では2〜3週間ほど海や山へ行き、仕事は忘れてゆっくり過ごす。日本人が家族にいれば、日本に帰る人も多いが、日本人に限らず外国人の場合は、母国に帰ると結局親戚や友人と会うだけで終わってしまい、なかなか「スイス人の休暇」のようにゆっくり過ごせないので、あえて避けている人もいる。今年はトルコでのクーデータの影響もあり、スペインやイタリアなど他のリゾートに人が流れたようだが、地中海はやはり人気リゾートだ。

日本人にして見ればうらやましい休暇の長さだが、それをさらに上をいくスイス人の人生の過ごし方として、会社を長期休暇もしくはすっぱりやめて、数ヶ月、1年単位で外国へ旅に出る、留学するなど、とにかくやりたいことを悔いのないようにやる人たちが少なくない。それも、30代、40歳を目前に、英語が十分できるスイス人が、今更カリフォルニアにスキルアップの語学留学する例もあり、日本では考えられない。日本なら2週間の休み明けに、自分のデスクがあるかどうか不安になってしまう。
結論を言えば、スイスはそういうことが可能な恵まれた環境にあり、尚且つ周りに流されない性格と言ってもいいだろう。

もう1例は、2ヶ月の長期休暇で、老人ホームや孤児院でのボランティア活動をする人もいる。普段のギスギスしたビジネスの世界から少し距離を置きたい考えがあるそうだ。新しいことをすると、脳にいい刺激になるということは言われているが、ある意味貪欲に新しいことにチャレンジする人も多く見習いたいと思う。

また、会社員をやめて、翻訳家になるための学校に入学した40代の人もいて、こちらは学生に戻って20代前半の若い人に混ざり、次なる目標に向かっている。
こうした1面だけ見れば、自由でいいなあと思うが、彼らなりにリスクは背負って行動しているのは間違いない。会社員なら長期休暇は出世の邪魔になるし、会社を辞めた人は、再就職も当然難しい。
しかし、その間何を考えて、自分にどんな影響があったのか、人生にプラスになったのか?そうしたことをきちんと説明できれば、そこはちゃんと評価してもらえる土壌がある。
日本の社会だと、たとえ意味のある時間を過ごしても、海外をふらふら放浪の旅をして、遊んできたような奴は評価しないと言われそうだ。本人には意味があるが、社会にとって何の役にも立たないということだ。それが、スイスでは一度日常のレールから外れても戻れる環境にある。

こうした環境もある反面、いわゆる燃え尽き症候群も増えている。何年も第一線で仕事に取り組んできた人が、突然やる気をなくしてしまう。何もできなくなり、家族がいるにもかかわらず、会社を辞め人生を見つめ直す人も多い。こちらは前述のやりたいことをやるスイス人とは対照的だが、自分の人生を見つめ直すという点では同じかもしれない。
多様な人種、多様な生活スタイルがあり、何が正しいか正しくないかは人それぞれ。
しかし、年齢問わず、新しいことを始め、それを受け入れることのできる成熟した社会があるからこそ、スイス人は失敗を恐れず自分の人生を真剣に考えているようにも思えた。