ここ数年、スイスのメディアで横断歩道上での死亡事故が多く報じられた。スイスは黄色い横断歩道で、歩行者が絶対的に優先され、車は止まらなければいけない。当たり前と言えば当たり前だが、その横断歩道での死亡事故多発。
 これは、多くの横断歩道は、信号のないロータリー式の交差点や直線道路の途中などにあるが、歩行者がいなければ車はそのまま通行する。検証はされていないが、「歩行者は絶対的に優先、車は必ず止まる」という歩行者側の強い意識もあり、車の往来を全く確認せず渡る人も多く見られる。
 一方車の方を見ていると、とにかく急いで交差点を抜けようとしている車の多さに驚く。実際、筆者もロータリー式の交差点で、急ブレーキを踏まれた事がある。特に子供がいると一度立ち止まって見るように教えているため、車の運転手はその立ち止まった隙に、行ってしまおうというのが分かる。

 こうした状況を見ると、横断歩道上で死亡事故が発生するのも想像が出来るのだが、その結果どうしたのかと言うと、住宅街などの道路は、車は時速30キロ制限になり、そのエリアの横断歩道は何と消されてしまった。歩行者の過信を無くすためなのか、はじめは不思議な気がした。
おりしも、子供の幼稚園で地元交通課の警察官が来て講習があったので参加した。保護者たちはその疑問をを警察官に投げかけていた。
その警察官によると、理由は分からないが、横断歩道を消して、30キロ制限にした結果、事故の数が減ったと言う。
今まであった横断歩道がなくなり、その場所は当然車が優先となっていて、車は止まらなくても良い。しかし、子供だけで歩いている場合、曲がり角などでは、まだまだ判断に困って危ない気がする。

 もう一つは、幹線道路での信号が変わる時間に短さについて、保護者達は口を揃えて、「あれでは子供は渡れない」と言った。確かに、子供たちが警察官に受けた講習の通り、足を揃えて、左右の確認をしていると、信号はもう赤になる。老人に至っては、渡りきれるかどうか分からない。
更には、横断歩道の向こうにあるトラムの駅のせいだろうか、その信号のあまりの短さにあきれた大人達は、平気で赤信号で渡ってトラムに駆け込んでいく。それを見た子供達が一緒につられて渡る子もいて、非常に危険だし、実際に事故も起きている。なにせ、幹線道路では車は結構なスピードを出す。警察の方では、信号の秒数をかえる事は出来ないそうで、道路交通法を変えないとダメなんだとか。

 スイスではトラムの走る町も多いし、車との接触事故も多い。トラムに歩行者がひかれた死亡事故も、各地域で年に数件はあるそうだ。
とにかく、車も歩行者もいっそうの注意を払う事が必要だし、小さな子供に至っては、親がついていないとダメだということ。スイス人の保護者は皆同じ見解だった。

 余談であるが、その講習に来た警官が取り締まった例として、黄色い横断歩道で止まらず、途中まで走行した車に注意し、車をバックさせたあとに取り締まり、なんと下されたのは、罰金ではなく、免許剥奪の重い処分だったそうだ。