スイス国民投票結果6/5

6月5日(日)スイスでは、国民投票が行われました。海外でも話題になっていたベーシックインカム制度導入の是非が一番の焦点でしたが、以下が結果です。

ベーシックインカム導入案:76.9%で否決
難民法改正:33.2%で可決
公共サービス事業の強化:67.6%で否決
道路税収改正案:70.8%で否決
着床前診断の改正:62.4%で可決

ベーシックインカム導入案
今回の最大のテーマと言ってもいい、ベーシックインカムの導入は予想通り否決。
事前の調査では、導入されても仕事は辞めないと答えた人が多く、労働意欲の低下を招く上、税金も高くなる。さらには、移住申請者が増えることを懸念した側面もある。
また財源の確保をどうするのかという問題もあった。おそらく大きな否決ポイントは、ベーシックインカム2500フランを下回る収入の人は収入が増えるが、それ以上の人は変わらないため、意味がないと考えた人が多いようだ。

難民法改正
古くから難民を受け入れるスイスだが、難民の審査に時間がかかっていることから、審査日数を140日に限定する。現在では審査に2年近くかかることもあり、その分コストもかかる。
近年増え続ける難民問題に対応するため、審査日数を縮小するが、審査が簡単になるわけではなく、すぐに自国に帰されるケースも増えるだろう。

公共サービス事業の強化
これは通信、鉄道、郵便事業などが民営化されてから、サービスの質が落ちているため、サービスの強化を求める声とともに、公共サービスに携わる従業員の給与は公務員の給与を超えてはならないという事案だったが、事前説明が不十分だったこともあり分かりづらく、給与を制限すれば税収も減るとのことから、否決となった。

道路税収改正案
これはガソリンの税収を、道路交通事業のみに使うという案だったが、他の公共サービスへん配分が減るため、教育や軍の分野において縮小を余儀なくされるため、否決となった。

着床前診断の改正
不妊治療をしている妊婦、もしくは何らかの疾患を抱えている妊婦に限り、受精卵に異常があるかの検査を受けることができるかを議論し、可決された。

今回のベーシックインカム導入案にあるように、他の国では議論にすらならないような案件が、スイスでは国民投票にかけられることにいつもながら驚く。そして、相対的に見れば、国民の判断も概ね常識的であり、奇策とみられるような案件でも、とんでもない結果にならないところが、スイスの国民投票ではないだろうか?