サッカー欧州選手権と欧州の情勢

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サッカーの欧州選手権がフランスで始まり、連日各国で盛り上がりを見せている。ここスイスでも同様だ。
しかし、懸念されていたテロの標的とは別の問題も起こっていて、サポーター同士の衝突が問題になっている。
正直ニュース映像を見てしばらく固まってしまった。背後から椅子で殴られた人が階段を転げ落ちて行ったり、倒れた人間を数人で蹴っていたり、正気の沙汰ではない。血まみれのサポーターが歩き回り、実際に重傷者、死亡者が出ている。ほとんど殺し合いだ。

ロシアのサポーターに至っては、再度騒動を起こしたら、ロシア代表チームは失格となり国へ帰らなければならないと、UEFAが厳しい判断をした。
一部では、組織的に暴動を起こしているグループもあるとかで、フランスの警備態勢も上がり、ピッチ外でも戦々恐々としている。

ここまでになると、サッカー以外に熱くなる理由があるとしか思えず、昨今の不安定な欧州の情勢を無視できない。
押し寄せる難民問題、テロの脅威、イギリスのEU離脱の議論(EU残留を訴えた議員が射殺されている)。
こうした市民の鬱憤が、サッカー選手権という場で晴らされても不思議ではなく、むしろ国同士の試合なら敵対する感情が一気に爆発してしまうのも想像に難くない。
スポーツは常にフェアプレイを求められながら、政治とは密接に関わり且つ利用されている。
7月の決勝までに何がおこっても不思議ではなく、もう純粋にサッカーを楽しめなくなっている。
子供達に夢や希望を与えるスポーツとしては、現状況では適しているとは思えない。そもそも、FIFA自身が例のスキャンダルで世間を騒がしていることを思うと、示しなどつくはずもない。スポーツマンシップ以前の問題だ。

今年はブラジルでオリンピックも開催され、そうした不安は益々高まる。最近までブラジルで暮らしていた知人によれば、ブラジル国内の治安はすこぶる悪いそうだ。
外国人の赴任者や裕福な層が暮らすエリアでは、部外者が入れないように、エリア全体が壁で覆われ、常に警備が敷かれているというから驚く。
そうした状況でのオリンピック開催は、夢や希望とは程遠い気がしてならない。
グローバル化が進み、世界との距離感を縮めるにつれ顕になる格差。爆発する不満。
本来、他国との交流の懸け橋であるべきスポーツや文化が、争いや憎しみあいの原因になっているのは悲しすぎる。