他国よりも厳しめの検査
スイスでは、自家用車の登録州(カントン)による車検が行われます。これは毎年ではなくて、車両登録してから5年目か6年目に通知が来ます。新車であるか中古車であるかにもよりますが、新車の場合は最初の検査が、約5年後でそのあとは3年後とかです。
車屋さんで行う定期検査とはまた違うもので、排気ガスのチェックやハンドル、タイヤ、ブレーキ、ライトが機能するかも検査しますし、ドライバーに指示を出して、フォグランプを点灯させるなど、ドライバーの知見も検査させることもあります。
また、車検を行う検査員が実際に検査場で走行テストもします。
さらに書類も重要で、車両の登録証とタイヤのホイールの検査書類なども提示を求められることがあります。また輸入車の場合は、EUの輸入証明などの書類も必要で、これがないと車検に通りません。
ここでいう輸入車の定義は、スイスのディーラーや自動車販売店がメーカーから直接輸入したものではなく、ドイツやフランスなど、他のEU諸国に輸出され登録、そこからスイスへ自動車販売店が輸入した車両となります。
スイスで車を購入した場合は、これらはほとんど必要のない書類ですが、まれにスイスでは扱っていないモデルなどを輸入して、スイス国内で販売することがあります。そうした車両にはCOCという書類がついてきますので、大事に保管をして車検の際に見せなければいけません。この証明書が、単なる1枚の紙切れで、無くしたり捨ててしまう人も多く、新たに注文すると250フランもかかります。
またタイヤの購入も近隣のEU諸国で購入するとスイスより安いので、利用する人も多いのですが、こちらは購入したホイールをスイスで登録させなければいけません。スイスの規定にあったものであるか、また自動車がメーカーが推奨している基準を満たしているかの検査に別途出す必要があり、これが通らないと事故を起こした際に問題となるようです。つまり、認可されていない車のパーツということで、保険がおりない可能性があります。
社外パーツなど、基準を満たしていない場合、いわゆる違法改造車の類に該当するようで、かなり厳しく検査されます。
例えば、知人から譲ってもらう車で、全ての書類が揃っていて、スイスでも検査が通っている車両であれば、個人での取引でも問題はないと思いますが、他の国の中古車を安易に購入すると、スイスでの車検に通らない可能性は高くなります。
このようなことを考えると、個人売買の中古の車やタイヤ、ホイールの購入は非常にリスクを伴います。また自己判断でのタイヤの交換やパーツの交換もサイズや細かい規定を満たさない場合があるので注意です。
タイヤに関しては、欧州の場合、2012年以降の新車販売では、空気圧センサーの搭載が基本ですので、それらを自分でリセットできないケースも多いため、車屋さんに頼むことになります。また、冬場のスタッドレスタイヤの装着も大事で、夏タイヤのまま走行し事故を起こすと保険がおりないケースがほとんどです。
スイスの自動車メーカー
スイスでは、商用のトラックメーカーやレース用のメーカーなどは存在しましたが、自家用車として流通している車両はほぼないと言ってもいいでしょう。
かつては、F1にも参戦した経験のある「モンテヴェルディ」という高級自動車メーカーがスイスにありましたが、現在は製造していません。
つまり、スイスではほぼ全ての一般的な自家用車が輸入車ということになります。ドイツやフランス、イタリア車などが人気で、日本車のその安全性と故障の率が低い車として認識されているため人気です。
近年は、電気自動車も増えて、テスラをはじめ、中国製の電気自動車も見かけます。スイスもこの10年くらいで、充電ステーションのインフラに投資したので、一気に増えました。
一般家庭の車庫でも充電中の車両を見かけます。
オイル交換や定期検査をしない人も実は多くいて、故障したまま走行しているケースもあります。そのため、スイス国内で走行する自動車の安全性を厳しくチェックすることは有意義だと思います。自動車を所有した場合、大事な書類を無くさないように、基準を満たした状態で乗ることが大切になります。