スイス人の子供との接し方、親との対話、学校

ある教育討論番組を見て

先日、ある日本の教育討論番組を見て、子育ての難しさや正解はないと言った議論に色々と肯く点も多く、同時にスイス人の子供への接し方はどうだろうと考えていました。

これについては、もちろん各家庭環境や子供の性格にもよりますし、何が正解というものではないと思います。

スイスに住む日本人の場合は、配偶者がスイス人や欧州人である場合も多いので、生まれながらにして2つの文化と言語に接して育ち、一般的なスイス人家庭や日本に住む日本人家庭とは異なるかもしれません。

ここでは、これまで自分が見てきたスイスの学校教育の特徴や他の子供達や親御さんの接し方について書いてみたいと思います。あくまで個人的な見解です。

スイスの幼稚園

幼稚園に行くということは、初めて親と離れて過ごす経験となります。これはどこの国でもそうでしょう。スイスではいろんな国籍の子供たちが集まりますので、自分の子供が日本人であろうと、スイス人であろうとあまり気にはなりません。ただし、外国人の子供の場合は、言葉の面で遅れを取ることもあるので、その辺は先生がちゃんと見てくれます。

そして、この頃からスイスの子たちは、よくハイキングに行き歩かされます。幼稚園なのに、こんなに距離を歩くのかと思ったのを覚えています。また、雨が降っていても、雷さえ鳴っていなければ、休憩の時間、子供達を外に出して遊ばせるなど、自然に触れさせる時間が多いように感じます。

小学校に上がる前になると、ここで初めて適性検査のようなものがあります。小学校に上がり授業についていけるかを先生が判断します。現地の言葉にまだ難がある場合や理解力、協調性がまだ足りないと判断された場合は、小学校生活をスタートさせる前に1年間、現地語や協調性を養う期間が与えられ、その後小学校に入学します。

幼稚園からすでに留年のような扱いですが、親の方は、そうしてくれた方が本人が辛い思いをしないで小学校生活をスタートできるので助かるという人や、逆にうちの子は大丈夫だと、先生の判断に激怒して面談で怒鳴る親もいるようです。

また、逆のパターンもあり、子供の知能指数が高く、IQのテストをしたところ幼稚園の課題では物足りないと判断された場合は、飛び級で小学校に入学した例もあります。ただし、協調性や社会性はまだ幼くて、問題を起こすケースもあります。

スイスの公立小学校

担任の先生にもよりますが、最初の1年間は現地語(ドイツ語やフランス語)の習得に力を入れて、発音から読み書きを2年間で習得できるよう力を入れている印象が強いです。どんな教科を学ぶにしても、言語を理解しないことには始まりませんので、至極当然かと思います。

もちろん課外活動やグループでの作業や協力して何かを作り上げていく経験もします。

3、4年生からは、算数などの科目も力を入れ出していきます。ここでも算数の能力が高い子には、特別授業を実施したりします。先生が子供の理解力や計算能力を見て、親御さんに相談した上で、テストを受けさせて、実際に算数の能力が高ければ、別授業を週に1回受けさせます。

スイスでは公立の学校でもこうした選抜教育が一部行われています。

スイスの中学校は成績・進路別に

スイスには職業訓練システムという、欧州でも非常に評価の高いシステムがあります。この道に進む人は、中学を卒業したらまず職種を選び学校に通いながら、会社に応募して研修を積みます。4年間無事研修を終了できれば、一人前として正社員の職を得られます。

良いところは、このシステムは何歳であっても学び直しができ、別の分野の仕事がしたくなった場合、その職種の職業訓練を4年間終了すれば、その分野での就職が可能になります。

難点は、いつも議論されていますが、15歳前後でこの判断をしなくてはいけないため、やはり数年後気が変わったりすることがあります。また、4年間の職業訓練を終了できずに途中でやめるということを繰り返して、いつまで経っても訓練を終了できない人も中にはいます。

高校(ギムナジウム)から大学に進学する人も同じで、卒業できない場合、留年したり専攻科目を変えたりします。それでも卒業できずに、気がついたら30歳を超えていたという人も稀にいます。

何かしらの職業訓練や学士を終了できないと、就職も難しくなります。こうしてシステムからこぼれてしまう人がいるのも事実です。しかし、ほとんどん人は、何かしらの職業訓練を終了して就職しますので、総体的にはよくできたシステムだと言われています。

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