肉の消費量が多いスイス人

農家を訪ねるドキュメンタリー

先日スイスのテレビ番組で、普段肉をよく食べる人を何組か招待し、牛農家へと見学に行くドキュメントを放送していました。

毎週どのくらいの量の肉を食べるのかという街頭インタビューからはじまり、実際にどの様にして食卓に肉が届くのか。そのプロセスはどんな感じなのかを実際に見てもらうという趣旨の番組でした。

ある男性は、週に800gの肉を食べるといい、別の家族も1人600gは食べると答えます。思った以上に多い肉の消費量。

7年ほど前のデータでは、スイス人は政府の推奨する食肉の消費量より、男性で4倍、女性で2倍の消費をしていると発表されてます。
政府推奨の1週間あたりの消費量は、240gで、男性は980g、女性は570gを消費しており、はるかに上回ります。

確かに、多くのスイス人は、夏はソーセージやステーキをよく食べるし、冬には肉のフォンデュが人気です。

自身もスイス人宅に招かれた際は、ほとんどが肉料理で、夏場は決まってBBQで、ソーセージやステーキのいわゆる加工肉が増えます。

健康に気を使う場合、加工肉が胃にも腸にもよくないのは分かっていますが、ついつい食べてしまいます。

実際の現場を見て涙

肉の消費量を減らそうとスイスでは言われる様になりましたが、それもまだここ数年です。

農家がどの様にして肉の処理をしているのかを実際に一般の人に見てもらうわけですが、これがTVで放送するにはなかなか過酷な映像で、日本であればカットされていそうなシーンも映っていました。おもわず目を背けたくなる処理過程もあり、TVの画面越しでもかなり衝撃でした。

同行した一般の人の中には、泣き出した人もいるほどのシーンです。

それでもあなたは肉を食べますか?と言われているのも同然です。

誰もが、牛や豚が殺処分されてスーパーに並び、食卓に届いているのは知っていますが、実際の過程を想像しながら食する人はいないでしょう。

加工肉に至っては、何も思わない人がほとんどです。

環境活動家やベジタリアン、ビーガン主義者の主張

近年、大きなデモも起きている環境問題。地球温暖化は、人々が豊かになった象徴だとし、我々が食する牛の肉も対象です。

世界中の牛のゲップに含まれるメタンを二酸化炭素に換算した場合、温室効果ガス排出量の4%ほどになるそうです。

他の欧州国に比べると、スイスの場合、肉の平均消費量は少し下がりますが、それでも多いとずっと言われてきています。

理由の一つには、経済的余裕があり、休暇で過ごす海外での食事もあげられます。

休暇先では、アパートを借りて自分で料理する家族もいますが、スイスに比べて肉の値段も安いとなると、普段より多く食べてしまうという人も少なくありません。

つまりスイス人の場合は、国内での消費のほかに、海外で休暇先での肉の消費も多く、それを加味した場合は、近隣国の平均値を超えてしまうかも知れません。

魚介類と卵も

魚貝類を全く口にしないスイス人の多さには驚きます。魚を食べたことがないという人もいて、菜食主義者を除き、そうした人は決まって肉食です。

魚類も実は漁の仕方が重要で、たとえばツナの缶詰には、釣り針の絵が書いてあるものは、1匹づつ吊り上げた魚を使用していますという意味で推奨されています。

そうでない魚は、網で大量に引き上げられたもので、その際、圧死している魚も多いとし、苦しんだ魚を使用しているという認識の様です。

卵も同じことが言われており、卵のケースに書いてありますが、広い養鶏場で産み落とされた卵なのか、ケージに入れられて悪質な環境で生まれた卵なのかがわかります。

より良い環境で生まれたスイス産の卵は、他のものよりも高くなっています。EU諸国から入ってくる輸入の卵は、スイス人には敬遠される様です。

ストレスを多く感じた鶏、苦しんだ鶏の卵を食するのは、人間にとっても悪影響があると言われています。

農薬も含め、全ての食材に言えることなのかも知れませんが、気がついたらそうしたことが当たり前に議論される世の中になっていました。

昔のスポーツ選手は、筋肉をつけるために、肉をたくさん食べたという話を聞きますが、今では逆で、肉を食べても筋肉がつきやすくなることはないと言われていて、トップアスリートの人たちの間では、肉食を減らしていると聞きます。

医学も発達し栄養学も進歩した結果が、肉の消費を減らすという流れにも合ってきています。

非常に興味深い残酷な番組でしたが、自身の食生活も一度考え直す機会にはなった気がします。

スイス人視聴者にどの程度届いたのかも気になるところです。