国民投票/お金か倫理か?

国民投票のテーマ

本日はスイスの国民投票の日。今回のテーマは、以下の2つにあります。各自治体の投票テーマは省きます。

1、軍需産業への融資を禁止する

2、スイスにある企業が外国での人権及び環境への責任を問う

この2つは、両方ともスイス経済への影響がある内容であると同時に人権侵害などの倫理的な問題を企業に問うものであります。

軍需産業への融資を禁止する

1の軍需産業の融資については、スイスは武器の輸出をしていますので、その武器製造に関わる中小企業が提供する精密技術などにも影響が及びます。中には、自分の会社の技術が武器の製造に使われていることを知らない小さな企業もあることから、線引きが難しいケースもあります。

また、武器の輸出先では、その国の政府により人権侵害が行われている国もあるため、批判されています。まさに金かモラルか?といったテーマですが、スイス政府は否決を推奨しています。

スイスにある企業が外国での人権及び環境への責任

スイスにある多国籍企業が、外国での事業において、児童の違法労働や人権侵害、環境破壊についても責任を負わせるというもので、今日の投票日までに、炭鉱で働かされて鼻血を出している少女のショッキングなポスターがあちこちで見られました。現実には、こうしたことが起こっていることをスイスに在籍する企業が黙認しているか、気がついていないかはわかりませんが、その責任を問うという内容です。

国民投票結果

軍需産業への融資を禁止する / 否決

投票数:賛成 42.5% 反対 57.5% 

カントン/州 賛成:3.5   反対:19.5

否決

スイスにある企業が外国での人権及び環境への責任を問う / 否決

投票数:賛成 50.7% 反対 49.3% 

カントン/州 賛成:8.5   反対:14.5

否決

*投票数で過半数を得ても、各カントン(州)の過半数も必要になります。

 

追記:今回、両方とも否決になった背景には、コロナウィルスの感染拡大により、経済活動が制限されていることも影響しているようです。これ以上の経済活動の縮小を望まないということでしょう。企業の責任を問うテーマでは、国民投票では拮抗しましたが、カントン(州)の票数では明白な結果となっています。