スイスの学校システムから外れると

*AI人物素材(モデルリリース不要)

幼稚園から中学までとその後の選択肢

スイスでは、幼稚園から小学校、中学までとほとんどの生徒が地元の公立校に通います。英語を習わすためにインタナショナルスクールやボーディングスクールに通わせる家庭もありますが稀です。

日本と同じく中学校までがいわゆる義務教育で、その後は職業訓練をする子もいれば、高校や専門学校に進む子もいます。

当サイトでも何度か話題にはしていますが、職業訓練のシステムがしっかりしている反面、職業選択する年齢が早すぎるのではないか?という議論はいつもあります。

良くも悪くも、食いっぱぐれを無くすシステムだと思っていますが、そこからどうしてもこぼれてしまう子も実際にはいます。

職業訓練を何度も挫折し

知人のスイス人で、鉄工所のオーナーがいますが、少人数でやっていて常に忙しそうです。

彼の鉄工所では、職業訓練生をよく雇っています。

非常に面倒見の良い人で、素行に問題があって学校を退学した子や、家庭環境が難しく家を出されてしまった子供などを引き取って、自分の家に住まわせていることもあります。

そんな彼のところに来る子たちは、大抵職業訓練を何度か投げ出している子がほとんどだそうです。

そうした子を救ってやりたい、という彼個人の想いが強く、人として大変尊敬できます。

しかし、なかなか拾ってもらえない子もやはり沢山いるということで、宙ぶらりんの状態が続き、いつしかやる気もなくなり、親のスネをかじっているうちに30歳になってしまったという人もいます。

いわゆる、ニートとか引きこもりの類の人たちです。

高校に進んでもドロップアウト

中学校で成績が良ければ、大学や専門校を目指す高校(ギムナジウム)に入学できます。

学ぶことが前提なので、高校進学を選択した子たちは、自動的に就職も遅くなります。

スイスの高校は4年制で、大学に進めば、学士で終わる人は少ないので、マスターコースや博士号まで取るとなると、卒業が20代半ばから後半になります。

当然ここでも、高校を中退する生徒や大学中退の生徒がいます。

学力的な問題よりも、不安定な思春期に起きる様々なことに、将来の展望を考えられなくなってしまい、目標がないまま中退してしまうケースもあります。

友人の息子が今まさに瀬戸際

スイス人の友人の息子が、ギムナジウムに入学したものの、成績が足りなくて、2年生になれないかもしれないということです。

留年できるのはまだ救いですが、問題は本人がすっかり勉強のやる気をなくしてしまっているということです。

家庭にも問題はなく、思春期特有の気持ちの乱れみたいなものでしょうか。

しかし、親が言うには、留年させてもやる気のないままでは、また1年同じことの繰り返しで、意味がないということ。

確かに、本人にやる気がなければ、わざわざ何年もかけて、目標のない勉強をするのは時間がもったいないかもしれません。

仮に留年しなかった場合、どんな選択肢があるのかというと、職業訓練校や経済専門学校などがありますが、今のタイミングで高校からその学校に転向する手続きも難しいようです。それは、現在中学3年の子たちが、すでにその専門的な学校へ進む決定をしていて、今年の夏からの入学はほぼ決まっており、願書を締め切っている学校がほとんどだからです。つまり入学を希望しても、来年になってしまいます。

ただ、その間の期間を埋めるための学校も実は存在して、中学卒業時点で、職業訓練にも高校にも専門学校にも進まずに、もう1年普通過程の学校にいき、その間に進路を決めるという選択もあるそうですが、そちらもどうやら願書が間に合うかどうかわからない。そもそも夏直前にならないと、最終的な成績がわからないので、決断できないようです。

また、この間に、海外留学やホームステなどのプログラムに参加して、その後の進路を決める場合もあるようです。

こうして話をしていると、システム上欠陥があるようで、その受け皿的な選択肢はいくつか用意されていることがわかります。

*(各カントン自治体によって違いますので、ご了承ください。)

 

スイスの国力、競争力

15歳、16歳という年齢で、将来の方向性をある程度決めるのは、確かに難しくもあります。

ただ、全体的に見た場合、スイスのそのシステムは他の欧州国もモデルにしていたりします。ドイツも同様に職業訓練システムは成功していると聞きます。

手に職を持つという基本的な考え方と、それに基づく将来設計、次の世代の社会での活躍がこの国を支えているわけですので、スイスの国力や競争力を見る限り、一定の評価を得ているものだと思います。

製薬や金融、宇宙開発や科学分野でも研究が盛んなスイスでは、それを支えるための教育が長年されてきています。小学生の頃から、数学の能力が高い子やIQの高い子供たちを集めて、特別授業を受けさせるという試みもしています。実際に、友人の子供がそれに該当し、小学生ながら別プログラムで週1回特別授業を受けていました。

小さな国ながら、しかも多言語国家として、このシステムが浸透している事に感心しますが、逆に規模が小さいから可能だったという面もあるでしょう。

自分が受けてきた日本の教育とは明らかに違うスイスの教育システムを、単純比較はできませんが、次の世代の子達を通して見ると、色々と思うことも多い毎日です。