スイスのバレエスクールで体罰が問題に

過酷なバレエスクール

スイスのバレエスクールは、世界的にも有名で、ローザンヌのバレエコンクールなどは、よくニュースで話題になります。日本人のバレエダンサーも出演し結果を残しており、毎年注目されます。そんなスイスのバレエスクールで、パワハラなどの被害の告発があり、現在調査に入っています。校長や監督は停職処分です。

バレエスクールは、TVでもドキュメンタリー番組で見たことがありますが、とにかく過酷です。世界から優秀な生徒が集まり、生徒同士の嫌がらせから始まり、コーチの厳しい叱責。足の怪我や変形した爪先など、痛々しい印象です。小学生からバレエを習っていた知人の娘さんを知っていますが、とにかくスケジュールも厳しく、コンテストや合宿に参加しなければ、もうその次からは練習に出てもコーチにあまり見てもらえないなどのハラスメントは当たり前だったそうです。結局怪我をして辞めたそうですが、身体的、精神的な負担は小学生や中学生にとって信じられないくらい過酷です。

今回のバレエスクールのハラスメントは、オリンピックを目指すようなトップダンサーが集まるスクールですので、そのプレッシャーは半端なものではなかったと思います。

スポーツ根性はとっくに時代遅れ

スポーツ選手に関する体罰や虐待は大昔からありますし、間違った指導もたくさんありますが、そういった根性で才能が伸びるといった精神論はもう古いでしょう。もちろん、何をするにしても強い意志とモチベーションは必要ですが、気合で怪我を克服できるわけではありません。近年はスポーツ科学も発達し、例えば筋肉をつけるために、肉をたくさん食べれば良いという教えは逆効果だとわかり、多くのスポーツ選手が食事を変えています。ベジタリアンはもちろん、ビーガンに転向するプロスポーツ選手さえいます。

階段をうさぎ跳びして登るなんてトレーニングも膝を痛めることがわかっていますので、今ではやっているスポーツ選手はいないでしょう。

そもそも、スポーツによって使う筋肉や必要なトレーニングも違うので、答えは一つではありません。今回は、その指導法が間違っていたということですが、それにより選手生命を絶たれた人もいますし、一生の傷を負った人もいます。スクールの校長は、辞めれば終わりでしょうか?知らなかったというコメントはよく聞きますが、それでは、学校内で起きたことの責任を取るのは誰か知らずに校長をしていたということになります。

履き違えられた厳しさ

こうした体罰や虐待に近いことは、日本でもよく聞く事実です。日本では学校の体育会系の部活動がまさにそれで、現在40から50代の人は、体験した人も多いでしょう。強い部活チームほど厳しい練習や過酷なスケジュールでした。先輩から命じられたメニューをこなし、試合に負ければ罰として、校庭ランニングを10週とか、スクワット100回とか、今思えば馬鹿馬鹿しいことが多かったように思います。それでも、自分の所属していた部活動は大して強くもなく、厳しくもなく、どちらかと言えば、楽しんでいた生徒が多かったように思います。どれだけ頑張っても、プロスポーツの世界に行ける人はほんの一握りです。中学生くらいだと、その現実が分からず練習に没頭してしまうこともあるので、周りの指導者の判断や親のアドバイスも重要です。

このバレエスクールの問題をニュースで見て、Black Swanという映画を思い出しました。ナタリー・ポートマン主演のバレエの世界の映画ですが、まさにパワハラ、セクハラがクローズアップされた映画です。すべてのバレエスクールがこうした世界観を持っているとは思いませんが、これに近い事、もしくはそれ以上のことがスイスのバレエスクールで起きていたのかなと思うとゾッとします。