スイスの住居の核シェルター

スイスの住居には核シェルターが義務付け

スイスの住宅には核シェルターがあります。とはいえ、普段は物置として使っていて、これまで実際にシェルターとして使用することを考えた人はいなかったのですが、ロシアのウクライナ侵攻に際して、設備をチェックし直す人も多いようです。

実際どのような設備かというと、先ずは入り口に分厚い扉があります。この扉を閉めて中に避難することになります。そして、中には、簡易ベッドが常備されています。ただ、これらを使用するためには、物置の中の荷物をある程度出さないことには、住民がベッドを敷いて寝ることはできません。

また、住居によりますが、トイレとシャワールームもあります。ない住居もあります。

そして、閉め切った空間で重要な空気を入れ替えるための装置もあります。これも長年使われていないので、一度チェックする必要があると思います。

*左から簡易ベッド、空気清浄機、分厚いシェルターの入り口にあるドア

ヨウ素剤の配布

スイスは、フランスに近いこともあり、例えばバーゼル市から50Km圏内にフランスのフェッセンハイム原発があります。すでに廃炉作業を始めているはずですが、その間に事故が起きたり、ミサイルが飛んできて、使用済み燃料などの流出が起きれば、スイスにとっても他人事ではありません。もちろんスイス国内の原発においても同じことです。このため、ヨウ素剤が各家庭に配布されています。期限が来ると、郵便受けに家族分の箱が入っています。

こうした対策はスイスではすでに民間防衛マニュアルとして長年行われてきたことです。ドイツのナチス政権の毒牙にかかる直前で戦争が終結し、スイス本土の爆撃などはされずに済みました。(ドイツの国境際の街は爆撃機による着弾はありました。)

スイスの兵役義務

周りを列強国に囲まれ、自らの国を守る術をスイス人なりに考え今日に至るまで実行しているわけです。永世中立のスイスでも兵役義務があり、有事には、民間兵の招集も可能です。

のどかなスイスの風景に突然現れた、貨物列車に積まれた戦車を見た人もいるのではないでしょうか?軍事関係の車もMのナンバープレートをつけて走っているのもよく見かけます。兵役を終えて帰宅する若い兵士が、機関銃を抱えて軍服姿でトラムやバスに乗っている光景もアルプスの風景とは真逆のイメージです。

実質的に自国本土で戦争を経験していないスイスですら、こうした防衛準備を常日頃からしています。兵役義務も社会奉仕をして、免除を希望する若者が確かに増えていますし、大学生などはそれが当たり前でした。しかし、ロシアのウクライナ侵攻、第3次世界大戦の危機にスイスはどこまで対処できるのか。そんなことを考える人も増えているのではないかと思います。

また、スイスに住む日本人は当然兵役義務はありませんが、スイス人との結婚で生まれた男の子たちは、将来この選択を迫られます。子供たちもそのくらいの年齢になれば自分で判断を下します。親が干渉して決めることではなくなり、日本人の親としても頭を悩ますことになります。

これまでで西側に一番近い戦争

西側諸国の人にとって、これまで現実味がなかった欧州での戦争ですが、ロシアのウクライナへの侵攻で、一気に危機感を増す状況ではあります。

スイスの核シェルターのような備えがあることはいいのですが、ここで何日も過ごすことは正直想像がつきません。こんな狭い空間で、いつ終わるかもわからない戦争に耐えるなんてことが想像できないのですが、この2022年の現在、現実にウクライナで起きているわけです。たくさんの子供たちも外に逃げれずに閉じ込められていると聞きます。

軍事評論家やロシアの専門家、外交評論家などが、色々見解を示していますが、その間にもたくさんの人が亡くなっているわけで、一刻も早く戦争を終結させて欲しいです。戦争が生み出すものは何もないと実感する毎日です。