サッカー選手と差別

あるサッカー選手の過去の動画が流出して

現在開催中のサッカー欧州選手権は、いよいよ日曜日に決勝戦です。スイスは残念ながらスペインにPK戦で敗れましたが、2試合連続で同点に追いつくなど、なかなかの健闘ぶりを見せてくれました。試合としても面白いものでした。

そんな中、あるサッカー選手二人の差別発言が話題となっていて、どうやら日本人を差別したということです。もちろん何人であっても差別はあってはならないですが、欧州に住む日本人としては、少し気になるニュースです。
この二人の選手は、すでにメディアでも取り上げられているので、あえて名前は出しませんが、誰もが知る強豪クラブの人気選手二人です。

問題の動画は、2年前に日本へ遠征した際のホテルでの出来事。ゲーム機の設定をしに来た日本人のホテルスタッフの容姿や言語を侮辱しています。
日本人スタッフを目の前にして、彼らの言語で侮辱しているので、日本人スタッフは何を言われて笑われているのか気がついていません。わざとそうして笑いを誘っている感じです。

正直、若い選手の悪ふざけと言った印象ですが、昨年は黒人差別の問題が大きくなり、更にコロナ禍ではアジア人も差別の対象になりました。常に差別される側の人間として暮らしているので、そうしたニュースはどうしても気になります。しかも、それが影響力のある有名選手の発言となると、問題は大きくなりがちです。

差別根絶をスローガンに

サッカー協会のFIFAは、差別根絶をスローガンにしていますが、それはあくまで協会のスローガンであって、選手がそう思っているかはわからないということです。実際にサッカー以外のスポーツでも差別はありますしなくなりません。時には、選手同士の差別もあります。あのスローガン自体は良い事ですが、いつも違和感を感じていました。

国と国との対抗戦になると、試合中は当然相手のチームを「敵」として試合をしますし、応援する側も相手チームは「敵」です。そうしたちょっとした感情から、差別にもつながるのかなと思います。
この選手二人は、SNS上で謝罪をしたようですが、形式だけですので、感情がおさまらない人も多いでしょう。

スイスでの差別は?

スイスでも差別は当然あります。これまでいくつかの国々で暮らした経験がありますが、スイスは比較的、差別される経験は少ない方じゃないかなと思います。もちろんゼロではありませんし、欧州滞在期間も長いので、数えればそれなりに差別された経験はあります。
自分の印象では、差別的な発言やジェスチャーをするスイス人は、ほぼ無意識でやっている感じです。全く悪気もないのがわかりますが、敏感な人や差別された経験のある人なら、自分に対する発言でなくても嫌悪感を示します。仲の良い友人の間でも、そうしたジョークみたいな感じで余計な一言が出てくることもあります。

これは、その国の社会における立場とも関係していて、普段人種で差別されることのないスイス人は、どこか海外で暮らした経験でもない限り、差別を受けるという経験がありません。無意識のうちに、社会における自分の立場が優位であるがために、そこに気づけないのだと思います。
これはアジアにおける日本人も同じようなものです。

しかし、このご時世、いろんな国のルーツを持つ人が多い中、そうした発言は気をつけないとトラブルを招きかねません。優位な立場で生まれ育ってきた人間でも、相手の立場に立って物事を考えることはできるはずです。今回のサッカー選手の差別発言も配慮が足りない幼稚な悪ふざけと思います。心の底から日本人を憎んでいるとは思えませんが、差別行為と取られて当然のことです。しかも、動画撮影までしているわけで、このホテルスタッフに対しての侮辱行為です。謝罪はまずこのホテルスタッフに直接してほしいものです。人権侵害で訴えられてもいいレベルでしょう。
サッカー欧州選手権は、たくさんの子供も見ていますし、自分の持っている影響力も含めて今後は考えてほしいですね。