スイスの学校で学ぶプレゼン


スイスで仕事をしている人は、スイス人のプレゼンテーションを一度は見たことがあるかと思う。
TVのインタビューや何かの講演会でもいいが、相対的にみると、多くのスイス人が堂々として、喋り方もうまい。
人前で何かを説明する能力が高いと感じることが多い。

どこでそうした技術を習得するのかといえば、やはり学校となる。高等学校や大学は当然だが、スイスでは小学校の高学年からプレゼンの課題が多くあり、皆の前で発表する。制限時間も決められ、選んだテーマをわかりやすく説明する。声の大きさ、発音、手振り身振りを加えた話し方など、採点基準も細かく別れている。
プレゼン方法は、手製のポスター形式が多いが、パワーポイントを使う子供もいる。ただし、あまり出来過ぎたパワーポイントを使用すると親の関与を疑われることになるので、先生からは事前に釘が刺されることが多い。

日本の学校でも当然クラスの中で「発表」というものがあった。思い起こせば、その発表は「グループ発表」が多かったように思う。40人学級だと一人ずつ発表するには、確かに難しかったかもしれないが、何が違うのか。
プレゼン内容はともかく、話し方の技術に関しては日本の学校ではほとんど指導がなかったように思うし、各項目の採点も特になかった。先生のノートには書いてあったかもしれないが、スイスの学校では、その点を評価し、クラスメートにもどこが良かったか、改善点はなど発表後に意見を出し合う。
話す際も原稿ばかり見ないで、皆の方を向き、何人かと目を合わせながら話すと評価が高い。そして、きちんと内容を理解していれば、ポスターやパワーポイントを見ながら、ほぼ暗記で説明することができる。

こうした訓練を10歳くらいからやっていれば、大人になった時にある程度どんな状況でも人前に出て堂々とプレゼンができる。ただし、苦手な人はいるわけで、あるスイス人の友人は、現在会社の役員をやっているが、役員に選出される際に、人前でスピーチをしないことを条件に引き受けたそうだ。
彼によると緊張してしまい、人前で話すことはどうしても無理なんだとか。経験も豊富で仕事もできる彼だが、自分の弱点も受け入れそれを正直に伝えるところもある意味スイス人らしい主張かもしれない。

職種によっては、プレゼンの能力を求められないかもしれないが、生活して行く上での主張の仕方次第では、物事が良い方向にも悪い方向にも転がるということ。そして、自分の意見を他人に流されず堂々と言える人間、且つ人の意見もきちんと聞くことができる人間が評価される社会になっている。
スイス人が議論好きな理由がここにある気がする。