スイスで同性婚についての国民投票

反対派の意見は、婚姻とは別にある

大きな焦点となっているのは、同性同士の婚姻よりも、同性カップルが子供を持つことにあるようです。女性の場合、つまりレズビアンのカップルの場合は、精子バンクなどを利用して妊娠、出産が可能で実子となり母親となります。また既に異性との婚姻関係が過去にあり、子供を持っている同性カップルもいます。そうした女性が同性と再婚することで、片方の女性は養子縁組ができますが、社会的な問題が子供に起きないか、または社会がまだ受け入れられないのではないか、親を選べない子供への差別が生まれるのではないか?というのが、反対派の争点になっているようです。つまり、賛成派は、同性の婚姻で平等の権利を求めているのに対し、反対派は、社会的な子供への差別が起きることを危惧しています。

男性カップルと女性カップルの差

婚姻が認められていない現在でも、同性のカップルのもとで暮らす子供もいます。しかし、同性婚が認められれば、男性と女性で差が生まれるという意見もあります。女性カップルは精子バンクを利用して妊娠できますが、男性カップルはスイスでは代理出産が認められていないので、海外で行う必要があります。

男性と女性で、少し状況が異なりますが、同性婚の合法化と子を持つ権利とは、少し論点がずれてくるため、逆に問題が起きやすくなるという意見もあります。ただし、代理出産の問題は、異性との婚姻夫婦でもあることですので、同性婚のテーマとは別で考えるべきだという気もします。

LGBTの差別問題

差別というと人種の差別や性差別などがありますが、同性愛者への差別も近年よくテーマに上がります。同性愛者の人が突然襲われたり、暴言を吐かれたりという事件はスイスでも起きています。一方で、スイスの社会では、多くの都市部では比較的好意的に受け取られていて、社会でも活躍している人が多く、TVなどメディアで仕事をする有名人もカミングアウトを行っていて、十分受け入れられている印象があります。

その結果が、冒頭の世論調査の数字に表れているのだと思いますが、実際に細かな権利の問題となると、そこまで考えて賛成している人も少ないように思います。移民への差別もそうですが、身近にそうした人がいないとわからないように、法的な差別と実社会での差別はまた違ってきます。

同性婚を合法化して、法律的な差別を無くしても、実際に生活していく上での差別は残るということになります。外国人として暮らしている人はわかりますが、実際に人種差別された時の気持ちは、差別をされない立場の人にはなかなか伝わりにくいものです。それと同じように、LGBTの差別の辛さもその立場の人にしかわかりません。

それでも、国民投票の議題となることで、権利の平等、差別の根絶に1歩づつ近づいていくことが出来るのではないかと思います。