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スイス各地の日本人の方の声(押川恵美さん/3月にアジア旅行から帰国)

*中国頑張れのポスター

1月から3月中頃まで、アジア圏を旅行された、シュヴィーツにお住いの押川恵美さんのお話です。スイスで感染の拡大が進む中、おそよ1ヶ月程度早く始まったアジア地区のパンデミックのさなか、タイやミャンマーを回ってこられたそうです。そして、スイスへの帰国。その流れをお伝えくださいましたので、ご一読ください。


2019年の暮れに、久しぶりにあったご近所さんと立ち話をしていて「夫が早期定年退職したので、来年の1月半ばから2か月間東南アジアを旅行します」と言ったら「息子の奥さんがタイ人なんだけど、そのお母さんが今バンコックで肺炎にかかっているのよ。すごくはやってるんだって」と言われた。
1月15日にチューリヒからバンコックへ飛んで、3月16日に帰る便。コロナウイルスの名前が出だしたのでどうかなとは思っていたけれど、行きはマスクをかけた人も見かけず、ごく普通のフライトだった。
始めはサメット島へ。中国人が100人ほどもボートで浜辺に上陸して、夕方になると潮が引くようにまたボートで帰っていく団体旅行の姿はまるで占領のようだった。その必死の観光の仕方は昔の日本の農協の団体さんも多分こうだったのだろう。わかる感じなのだ。食べて大声で笑って飲んで写真を撮ってお土産を買って。大金が使われているのは確かだ。

カンボジアのシャムレップからタイのバンコックへ。キャンセルの目立つ電光掲示板。

島に宿泊できるのはもっとお金持ちで、今度は家族単位。10人ぐらいの大家族と親せき。ご一行。これがだんだんと減ってきた。
1月末ミヤンマでは中国からの観光客がほとんどいなくなり、私たちにとっては観光地が混んでいないのとホテル代が安くなっていくメリットがあった。また、トレッキングをする中国人はほとんどいないそうで動線が違った。
ミヤンマからカンボジアに移動途中のバンコック2月半ばには状況一変。格安航空のフライト約半分がキャンセルされていた。多くが中国の都市で、武漢も含まれていた。売店、CAは全員マスク。乗客も7割がマスクをしていた。売店には「中国頑張れ」のポスター。カンボジアでは観光客が減っていて、リクシャードライバーや露店商、ウエイトレスから「嘆きの壁」のように嘆かれ、少しチップをはずむ。彼らにとってウイルスよりも売り上げのほうが目の前にせまった死活問題だった。
3月初頭カンボジアのシャムレップでは韓国レストランにはいろうとしたら、「コロナが収まるまで中国人お断り」の張り紙。。ボイコットする。差別だということがわかっていないようで、当然観光客はだれもいかない。大劇場の公演は中止。中国の団体さんがこないためだ。
3月14日バンコックの観光客は2か月前の3分の1といったところだろうか、必死にコンサートをして盛り立てている、これもわずか数日後にはすべてのレストランが営業停止となる。

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3月16日のバンコク発スイス航空は満席、マスクをしているCAはいない。乗客のマスクは数パーセント。搭乗の際に体温測定があっただけでごく普通に到着してごく普通に外にでた。空港はガラガラ、8時10分チューリッヒからシュヴィーツに向かう電車の車両は私たちだけだった。イタリア、スペインの爆発的感染。
シュヴィーツは3月16日からすべての学校は休み。17日から食品と医薬品の販売を除くすべての店舗は営業停止になった。あらかじめ娘から電話で聞いていたので驚かない。冷蔵庫がほぼからなので、近くの大きなコープに行く。

売り切れは、湾岸戦争の時もそうだったけれど、パンを焼くための全粒粉、塩、ドライイースト、粉末ミルク、卵。ここは日本人と勘どころが違う。トイレットペーパーは売り切れだけど、常に夫が買いだめしているのでたくさん家にある。
私はコメを2キロ、キャベツを1個、パプリカを一袋、スパゲティ1袋。これがいつもより多く買ったものだ。買い物は週に1回なのでこれができるかぎり不自由はない。不必要に買いだめをして、ほかの人の不安をあおらないようにと自分にいいきかせてもつい多めに買いたくなる。野菜の棚の一部が空になったのを初めて見たからだ。夫はラビオリの缶詰めを1個買った。連邦大臣は食料も日用品も十分にあると通達したそうだ。

公の場に5人より多く集まるのは禁止された。チューリヒに下宿している息子は、ほかの友人たちと、老人(私たち親)にウイルスを移さないために帰ってこないのだそうだ。風邪が流行っているし検査しなければ何のウイルスかわからない。

空気は清浄だし、水は水道水が飲めるし、停電はしないし、温かいお湯が出るし(水シャワーが結構あった)必要なものはすべて手に入る。とにかく移動が多かったのでうちにこもって掃除をしたり庭仕事をしたり、食べたいものを自分で作って食べていれば申し訳ないけれど今のところとても満足だ。

医療と食品販売関係の方々の尽力で、この快適さと安心は成り立っている。

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