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インタビュー

中華まんのコナ・キュッヘ

Konakueche

スイスのZUGで中華まんの販売をはじめられた、みちえさんにお話を伺います。

Q:みちえさんは、ドイツでパン職人のマイスターを取得されていますが、今回中華まんをメインに販売しようと思ったきっかけを教えて下さい。

マイスターの資格およびドイツとスイスでのパン職人としての経験や人脈をかわれて日本の業界誌に原稿を書く仕事をしているのですが、2013年は日本初の*シュトレン(ドイツ生まれのクリスマス菓子)本(参考リンク)に歴史をはじめとする様々な情報を書く仕事が舞い込み、資料を読んだりメールで取材をするため、子供たちを寝かしつけてから毎晩夜なべをする時期がありました。おかげさまで、今まで自分がやってきたことや人脈が全て繋がったような、そして、協力してくれた方々の温かい思いを一つの原稿にまとめられたような心から満足のいく仕事ができました。
その仕事が終わってやっとホッとゆっくりお風呂に入っていた時に、ふと思いついたんです。「今まで何度も独立をいろんな方に提案されたけれど、パン屋は毎日新鮮なパンを焼かなければいけないし、一日お店に立っていただく販売員も雇わなければいけない、そして夕方売れ残ったものはすべてロスだし、何よりスイスの物価の高さでは毎月の店舗の家賃が大きな負担で、それらのリスクを全部しょってやっていく勇気はない、と思っていたけれど、日持ちのするシュトレンだったら贈答用に一風変わったものが作れるのではないか?」と。和の要素を盛り込んだシュトレンを贈答用に作って独立しようと思い立ち、準備をはじめました。作業ができる工房を探していた時に、私の話を聞いてくれた友人たちは口を揃えて、「独立するならぜひ肉まんも作って」と言うのです。これは、何度か私がカオマ・バザーで出品したもので、おかげさまでとても人気があります。

最初はドイツでマイスター資格を取った私のプライドが邪魔して「どうして皆、私が趣味で出した肉まんのことばっかり言うのかしら?私はドイツ仕込の技術を生かしたものが作りたいのに!」と思っていましたが、だんだん考え方が変わりました。「皆が求めているものから作ろう!ドイツ仕込みのパンやお菓子は最終目標としてとっておいて、軌道に乗ってから」と。

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(2014年ZUGバザーにて)

Q:材料の確保などを含めて、苦労したところはなんですか?

私の作るものにはなるべく地元で採れた材料を使いたいし、化学調味料ではなくシンプルな味付けにしたい、また、ドイツでのBIOベーカリー、スイスの学校キッチンでの経験から、菜食主義者、アレルギーを持っている人にも受け入れてもらいたかったので、風味豊かな干ししいたけ、しかも現地産のものは絶対に必要でした。探し回っても流通していないので、チューリッヒの有機しいたけ農家に電話して作ってもらうことにしました。これ自体はそんなに苦労したことではないのですが、一番苦労したのは、業務用のキッチン探しでした。作業所のような物件を借りることは、ここツークでは大変困難です。ご存知の通りツーク州は税金が安いことで有名なため、特に多国籍企業の経理部門であったり、プライベートバンクといった金融関係の会社が多数オフィスを構えています。そのような会社は資金が潤沢だし、彼らが節約できる税金に比べたら、庶民にとっては大きな額のオフィス家賃もお茶の子さいさいというところでしょう。そうすると、オフィスや店舗の貸主だって、できることなら音もにおいもでなくて高額な家賃でも借りてくれる人たちに貸したいと思うのが普通です。

そういうわけで、まず私の使用目的に合う物件自体が市場にほとんど出ていないのが現状です。そして、実際に賃貸情報がでたとして、次に問題になるのが、その貸し方です。ここでは賃貸の店舗や作業所物件はコンクリート打ちっぱなしの状態で引き渡されます。そして、内装はすべて自分でやらなければいけませんし、出て行くときには、またすべてを取り払って元の状態にして返します。ということは、ただでさえ高い家賃に、内装工事にかかるお金、出ておくときの撤収工事代を月割りにしたものを上乗せしたものが毎月の作業所代となります。そのような作業所を借りて、一心不乱に自分のビジネスのために働けるのであれば、高い固定費も払っていけるでしょうけれど、主婦と母親業もこなさなくてはいけない身の私には、まず毎日作業所に行くこと自体が不可能で、高額の固定費を払うためだけに働くようなことになりかねません。

そこで、友人が経営するホテルのキッチンを夜中に借りたり、元職場のキッチンを貸してもらったりして最初は対応していましたが、いつまでも友情に甘えているわけにはいきませんので、作業所探しには本当に困って焦りました。
そんな折、また注文しておいた干ししいたけが届きました。そこで、ふと「この農家はキノコ以外に何を作っているんだろう?」という疑問がわいて、早速ウェブサイトを見てみることにしました。残念ながら私のビジネスとはまったく関係のないものばかりが紹介されていましたが、あるページを見て息が止まりそうになるほどびっくりしました。その農家さんはケータリング業もやってるようなのですが、そこには「業務用キッチンを日割りでお貸しします」と書かれていたからです。早速電話をすると、先方も「ああ、干ししいたけの人」という感じで気さくに「見にいらっしゃい」と言ってくださり、行ってびっくり!私が一番使い慣れているラショナル社のコンビスチーマーもあって飛び上がるほど嬉しくなりました。おかげさまで、今はそこで中華まんを作っています。

スイスワンダーネット:
みちえさんの知識と経験、そして人脈などがパズルのように組み合わさって、この中華まんが誕生したということですね。確かにスイスの物価の高さは、商売を始められる方にとっては、ハードルが高くなり、それをいかにうまく超えるかというのが最初の課題ですね。しかし、いろんなアンテナを持っているみちえさんがなせた業でしょう。

Q:アジア人にはお馴染みの中華まんですが、スイス人の反応はどうでしたか?

どんなものか説明するのには、オーストリア名物でドイツのクリスマス市でも時々みかけるゲルムクネーデルに似たもので、中には野菜とか肉のフィリングが入っている、と説明すると、みんな美味しそうと言ってくれます。学校キッチンおよび学校のカフェテリアの経験から、クネーデル自体は好きな人が多い印象は持っていましたので、そこにふわふわしたテクスチャーが加わると、ますます受け入れられやすいという自信はあり、実際、食べた人からはいつもポジティブなフィードバックをいただいています。バザーやお祭りでも、とりあえず一つ買って食べてみた人が、「美味しかった」と家族を引き連れてリピートしてくださることがよくあります。
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*クネーデル(参照リンク

Q:コナ キュッヘというネーミングは面白いですね。やはり材料の「粉」から来ているのでしょうか?

ありがとうございます。穀物や豆の粉から美味しいものを作るので、粉キュッヘ(台所、キッチン)にしました。スイス人やドイツ人にも発音しやすく覚えやすいネーミングにし、ドイツ在住の日本人デザイナーさんに、私の希望通り、穀物の穂と豆の絵のついた家紋風のロゴも作ってもらいました。

Q:ベジタリアン向けの中華まんがありましたが、スイス人向けのメニューも考えておられますか?例えばチーズを入れるとか?

ベジタリアン向け、アレルギーがある方向けの商品を作ることは、15年前にベルリンのBIOベーカリーで修業をしていた頃から食品業界のメインストリームになることは感じていましたし、その考えが正しいことは、スイスの学校キッチンで働いて、食べる側のニーズを直接聞くことで更に確かなものになりました。日本人の私が食べて美味しいものを作ることは当たり前のことですが、私の中華まんの味付けや具のバラエティーはスイス人、現地の人を意識したものになっています。クラシックな豚まんは、小麦粉で作っていますが、スイス人の好きな野菜まん、鶏カレーまん、大豆ミートまんは、ディンケル粉で作っていますし、うちの商品には、一切乳製品や卵は使用しておりません。乳糖不耐症対応のため、チーズの入った商品を作る予定は今のところありませんが、もしピザまんなど、やっぱり作ろうか、という時には、ラクトースの入っていないチーズを使う予定です。

Q:最後にみちえさんの中華まんの売りでもある、地元のオーガニックな材料についてのこだわりも教えて下さい。

15年前にベルリンで有機のパン屋で修業をしていた頃から、地元のオーガニックな材料で製品を作ることの気持ちのよさを感じていました。いろんなところで仕事をしてきましたが、コストばかりを意識したような、自分では食べたくない商品を作ることは楽しくないですし、ストレスがたまります。

小さい子供を持つ親として、安全な食品を食べさせたいという思い、自分が美しいと思う自然の姿や風景を残したいという思い、そして、少なくともこの子たちが自立するまでは自分も健康でありたいという思いがあります。そんな自分の心に嘘をつかない、良いものを提供したいという製造者としてあるべき心構えを実践するためには、地元のオーガニックな材料を使うことは自然な成り行きでした。おかげさまで、いろんな縁にめぐまれて、BIO農場にあるキッチンで地元の材料を使って、美味しい中華まんを作れていることに感謝する毎日です。
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スイスワンダーネット:
食材への関心や安心感はここ数年で更に高まっています。食品を作る方にとっても、食べる方にとっても、この材料の明記は現在では非常に重要なポイントです。食の安全という面で、どこの材料を使っているかを知りたい人がほとんどでしょうし、「中華まん」というスイス人に馴染みのないものを販売する際に、何が入っているのか?というのは、気になりますから、みちえさんのこだわりも納得できます。むしろ、こだわりというよりは、こうしたことがスタンダードになってきていると捉えたほうが良いかも知れません。

ZUGのバザーでは、筆者も豚まんを頂きました。ふわふわの生地に味のしっかりついた具の豚まんは、すごくおいしかったです。スイスで食べるのは初めてでしたし、最後に日本で食べたのはいつだったかも思い出せないくらいでしたので、うれしかったのを覚えています。
また、この中華まんを冷凍保存出来る点も、多くの人に食べていただけるアイデアですので、ぜひ皆さんもお試しください。
お忙しい中、インタビューを受けてくださって、ありがとうございました。2足も3足もわらじを履いておられるみちえさんのご活躍をお祈りいたします。

*お問い合わせ、情報は下記からご覧ください。

KONA KÜCHE 中華まん
Kona Küche GmbH
Fridbachweg 9
6300 Zug
Tel. 079 558 2527