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転職の多いスイス人と少ない日本人

転職は良いことか、悪いことか?

スイス人はよく転職をします。それがキャリアアップのための転職なのか、会社に必要とされなくなっての転職なのか、人によって様々ですが、久しぶりに会った人が、もう別の会社で働いているということは珍しくありません。ただ、自分の周りのスイス人の傾向としては、キャリアアップや職種の変更といった理由の転職が多いと思います。

日本で職を転々と、、、というと、あまり良いイメージを持つ人は少ないでしょう。しかし、スイスの人(欧州の人)は、理由がどうであれ、職を変わることにそれほど抵抗がありません。転職がいいのか悪いのかよりも、常に自分が何をしたいのか?を優先させている印象です。

労働環境の違い

日本では、長く同じ会社にいることが良いとされてきましたが、今ではもう年功序列制度も崩れて、若い人たちの意識は違うようです。しかし、ずっと同じ会社にいる中高年の人は、勤続何十年という人の方が、良いイメージを持たれます。その代わり、日本の会社内では、転勤が多かったり、部署がしょっちゅう変わったりと人事異動が多い気がします。

中年になっても独身だったある知人は、日本全国転勤させられて、同じ街に3年といなかったようです。会社にとっての都合の良い駒だったわけです。同期で結婚して家族を持っている人は転勤がないのに、独り身のフットワークの軽さから、人事部には重宝されていた中間管理職ということです。ただ、その分、役職もついて出世しました。

しかし、地元に戻りたいという希望を人事部に何度出しても叶わず、結局退職を決意します。幸い、その知人はそれまでに、何度かキャリアアップの転職を遂げていたために、転職の厳しいと言われる年代であったにもかかわらず、すぐ地元に転勤のない転職が決まりました。

スイスでは、いきなり社員を他の都市に転勤させる人事をほとんど聞いたことがありません。短期間のプロジェクトのために他の都市や国に行くことはありますが、それでも事前に希望を聞かれますし、社員の意見が尊重されます。その辞令を断ったからと言って、降格するといった事もほぼありません。しかし、その会社の状況次第では人間関係に影響が出る事もあるでしょうし、自身のキャリアアップのチャンスを逃すことはあります。

残業する社員

残業についても、認識の違いがあります。日本では、残業は仕事を多く任されて頑張っている人、というイメージですが、スイスでは、就業時間内に仕事をこなせない人。という認識です。

もちろん、これは、わかりやすく大袈裟な表現ですが、実際にスイス人でも仕事量が多い人や決算時期は残業していますし、だからと言って、仕事ができない人ではありません。ちなみに、ドイツでは残業はなく、金曜日の午後はもう皆会社を出てビールを飲んでいる、なんていう話をよく聞きましたが、実際に大企業のマネージャーや重要なポジションの人は、忙しい時期に、明け方まで仕事をしているドイツ人上司もいたそうです。

スイスでは、上司が帰宅しないから、部下の社員が帰宅しづらいということはありません。逆に毎日部下が残業しているようなら、会社から上司が注意を受けます。その社員に合った仕事内容、仕事量なのか?残業が多いなら、上司がちゃんと監督していないということになります。有給休暇についても、部下がきちんと消化していない場合は、上司の責任になり、会社からペナルティがある場合もあります。監督不行届です。

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人間関係の問題は、日本もスイスも同じ

上司や同僚とうまくいかない場合も、あまり我慢はせずに転職をするスイス人ですが、それができない場合、中には人間関係に悩んで病気になる人もいます。その点は、スイスも日本も同じでしょうか。メンタルの問題は昔はひた隠しにしていたのですが、最近では、それを周囲に隠すことなく、職場の上司に伝えて休職なんてことも多々あります。それでうまく復帰しているケースもありますが、そのままフェードアウトする人も多いようです。

メンタルの問題は、特に若い世代に多いようで、見習いの研修生ですらメンタルの問題を理由に研修を中断したり、辞めてしまったりします。スイスでは、この職業研修の修了証がないと、正社員での就職が難しいわけですが、正規の社員になる前に問題を抱えてしまうわけです。そうした環境は、このコロナパンデミックで悪化したように思われます。

就職前の研修期間と就職後の研修期間

スイスでは職業研修を3年から4年受けて、正社員とした社会に出ます。日本では、大学や専門学校を出て、会社に就職が決まったら、その会社の研修を受けます。スイスは、大学卒で就職した場合に、即戦力を求められます。試用期間が過ぎたら、他の社員と同じように仕事ができないと、クビになる可能性があり厳しいです。

スイスの職業研修制度は、国民の誰もが職を持つことで、食いぱっぐれないようになっているよくできた制度ですが、一方で、この職業研修を何度もドロップアウトしていると、就職が遠のきます。何か一つでも職業研修を終了していれば道はありますが、最近はこの悪循環にハマる若者も少なくありません。

しかし、日本は新卒で会社に入ってから研修があり、最初の1、2年は会社に利益をもたらさない社員として、あまり重要な仕事を任せられることはありません。会社としては、人材育成期間として見ているため、非常に効率は悪いのですが、新卒の社員からすれば、正社員という身分が守られていることになります。その代わり、会社からの急な転勤や異動には従わないといけない空気があります。日本の会社で働いた経験がある人なら、誰もが一度は感じることです。

語学研修などのキャリアアップも可

スキルアップのために、会社を休職して、もしくは辞めて海外へ語学留学へ行くというのは、スイスでは若いうちはOKのようです。語学に限らず、現在の業務にプラスになる研修であるならば、会社が費用を負担してくれたりします。日本の会社にもそうした制度はあると思いますが、スイスの会社もある程度のルールがあるようです。

まず、会社がスキルアップ研修の費用を負担する場合に、その研修が終わってから1年は会社を辞めることはできないとか、どうしても規定の期限内に辞める場合は、研修費用を会社に一部払い戻すかなどの制約があります。あとは、上司と会社との相談になると思いますが、週に何度か通常業務を抜けて講習を受け、そのスキルを会社に還元するという前提での費用負担ですから、当然といえば当然です。

しかし、そうした会社のサポートもあってキャリアアップを図り仕事が続けられる環境は、多くのスイスの会社において、比較的良い環境にあるのではないかなと思います。

こうした背景もあり、スイス人の転職は多いのですが、年齢が高くなればなるほど、難しいのは変わらないようです。やはり会社も若い人に投資したいという考えはあります。それでも、転職にあまり悪いイメージがないのは、キャリアアップや自分のやりたいことを優先するという考えが根本にあるからでしょう。

突然仕事をやめて、全く違う職種のために学校に通い直す人もいますし、社内外のステップアップ研修受講など、スイス人は何歳になっても学ぶ意欲が高い気がしています。確かに、学業を終えてしまうと学校に通って何かを学ぶ機会も減りますので、自分でその機会を作ることが可能な環境は非常に良いと思います。

 

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