サイトアイコン swisswondernet.com

TVでベルセ内務相がコロナ感染対策について討論会

噛み合わない意見

スイス政府の会見で、コロナワクチンパスの活用を拡大するという見解を発表してから数日、TVでベルセ氏と反対派の一般の人たちがスタジオで生討論するという番組がありました。様々な年齢層と職業の方々が、一人2つほど質問をできる形式でしたが、議論はだんだんヒートアップし、時間が足りなくなり司会者が遮る場面もありました。番組中には、現役の議員も登場し1対1での討論。

まず、なぜ今回のようなコロナワクチンパスの活用を飲食店などに広めようとしているのか、それは会見でも十分説明されていますが、反対派の方達との論点が最初からズレていて平行線といった印象。

一方で、ベルセ氏の回答は、割と的確でしたし、過去にした発言の訂正などもあり、どちらかというとベルセ氏の印象を良くした討論会でした。

飲食業界の営業マンは

ある男性営業マンが、少し興奮した様子で話し始めたのが印象に残っていますが、開口一番、私はコロナワクチンを接種しません。と宣言した上で、仕事柄、毎週いくつものレストランを回る必要があり、10月から有料になるコロナ検査を考慮すると、1ヶ月に1500フランも自己負担しなければならない。それでは仕事に支障が出るから困る!と怒りに満ちた表情で話していました。

それを聞いたベルセ氏は、「ちょっと待ってください。あなたは会社員ですか?それともフリーランスですか?」と聞くと、男性は会社員ですという。ベルセ氏は、それなら、月曜日に会社と話をしてください。政府は、会社の運営に必要なコロナテスト費用は支援しますので、あなたが会社員であれば、それは会社が負担する費用ですので。それに仕事でレストランに行くのと、客として食事にしに行くのとでは理由が違いますから、心配しないでくださいと回答しました。

冷静で的確な答えだなと思いましたが、男性は納得いかない様子で、次の質問に移る際に時間切れ。番組放送が終わってから、個別に質問しても良いと司会者が促し、次の質問者にマイクが渡りました。

まず、単純に計算しても、72時間有効なコロナ検査であれば、週に2回で済みます。1回50フラン程度だとしても、毎月400フランくらいにしかならないはずで、検査に1500フランもかかりません。それに、仕事柄レストランに行く場合と、客として行く場合で違うことを考えなかったのか?会社に確認してからTVの討論会に出演しなかったのか?色々と疑問があった質問でした。

次のページは、「スイス政府の目的は明確 /コロナワクチン接種者とキスするな!」

スイス政府の目的は明確

ここまで見れば、明らかに政局が絡んだ政府批判と取れます。それは、現役の議員が出て質問した時に表れていましたが、スイス政府がコロナ感染防止対策を強化するのは、医療機関を圧迫しないようにするためのことです。現在スイスで重症化して入院しているコロナ患者は、ほとんどがワクチン未接種者。コロナ以外の患者のベットが足りなくなり、手術の延期も起きているのは、昨年経験したことです。伸びている感染者数を抑えるためには、今手を打たないと1ヶ月後に、病院がさらに大変な状況になるため、ワクチンパスの活用を提案していますが、これを逆手に取り、ワクチン接種の事実的強要だと反対派は批判しています。

確かに、状況的には、ワクチン接種の強要と取られても仕方がないのかもしれませんが、接種しない選択肢はしたくない人には残っているわけで、それを強要されたとは言えないでしょう。

討論会でも、なぜ打たないかは質問者も言いませんでした。健康的な理由であっても、政治的な理由であってもいう必要はないのかもしれませんが、では、この感染状況を他の方法で抑える代案があるのかというと、誰も答えられません。

イスラエルでの話を引き合いに出した議員は、ベルセ氏に「スイス国内の感染状況について話をしましょう」ときっぱり言われていました。確かに、他国の感染率を見ても、それとスイスで起きている感染状況は異なりますし、参考になりません。

コロナワクチン接種の彼とキスするな!

ある家族の話ですが、高校生の娘がいる家庭で、その娘には付き合っている彼氏がいます。しかし、彼女の家族はワクチンに強く反対で、彼氏にも打たないように言っていたようです。ワクチンを打つなら娘には会わせないとまで言いました。驚いたのは、その理由ですが、ワクチン接種者が未接種の娘にキスをしたら、コロナに感染するからというものでした。

結局、その彼氏はコロナワクチン接種をして、彼女の親に面会禁止を出されてしまいました。最後は親同士で喧嘩になって、会ってもいいがうちの娘とキスはするな!ということでした。色々な考え方をする人がいるなと思って、聞いていましたが、健康的な理由ではなく、思想的な理由で反対する人もいます。

このコロナパンデミックで、身近にいた人の思想信条や考え方がより明確になって、友人を失ったという人も結構います。ちょっと距離を置こうと思った知人も確かにいますし、交友関係にも亀裂が入る人が意外に多いのも見てきた1年です。

我々の生活を色々な面で分断しているコロナパンデミックは、あとどれくらい続くのしょうか?

モバイルバージョンを終了