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スイスで同性婚についての国民投票

スイスでは合法ではない同性婚

9月26日の国民投票で議題に上がっている「同性婚の合法化」ですが、世論調査の結果では、20%が同性婚に反対、どちらかといえば反対が9%、同性婚に賛成が55%、どちらかというと賛成が14%となっていて、わからない人は2%となっていて、現在のところ、69%の人がこの法案に賛成の意思を示しています。

スイスでは、同性の婚姻はまだ合法ではないものの、パートナーシップ制の導入はされており、遺産相続の権利や苗字の選択などの権利を持つことができます。しかし、婚姻のように全ての権利が認められているわけではありません。今回の国民投票で、同性婚が認められれば、平等な権利を持つことに近づくということになります。

友人カップルがこのパートナーシップ制を選択

このパートナーシップ制が導入されてから、友人の同性カップルもこの制度を選択しました。結婚式とまではいかないまでも、ささやかながら、親族と友人たちを招いてパーティーを行いました。昔からの友人なので、二人の幸せを心から祝福できたのを思い出しますが、本人たちは、家族や友人への告白まで、相当悩んだ時期があったそうです。当然、差別も経験していることと思います。

彼らがこのパートナーシップ制を選択したのは、片方のパートナーの両親がいない事もあり、例えば事故や病気で危篤状態になった際に、「友人」では、病室に入れないということが起きるため、万が一の状況も考えての事だったそうです。確かに、夫婦同然の生活をしているのに、最期を看取れないなどのことは避けたいでしょう。そうした細かいところの権利の有無は、当事者でないと気がつきません。

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反対派の意見は、婚姻とは別にある

大きな焦点となっているのは、同性同士の婚姻よりも、同性カップルが子供を持つことにあるようです。女性の場合、つまりレズビアンのカップルの場合は、精子バンクなどを利用して妊娠、出産が可能で実子となり母親となります。また既に異性との婚姻関係が過去にあり、子供を持っている同性カップルもいます。そうした女性が同性と再婚することで、片方の女性は養子縁組ができますが、社会的な問題が子供に起きないか、または社会がまだ受け入れられないのではないか、親を選べない子供への差別が生まれるのではないか?というのが、反対派の争点になっているようです。つまり、賛成派は、同性の婚姻で平等の権利を求めているのに対し、反対派は、社会的な子供への差別が起きることを危惧しています。

男性カップルと女性カップルの差

婚姻が認められていない現在でも、同性のカップルのもとで暮らす子供もいます。しかし、同性婚が認められれば、男性と女性で差が生まれるという意見もあります。女性カップルは精子バンクを利用して妊娠できますが、男性カップルはスイスでは代理出産が認められていないので、海外で行う必要があります。

男性と女性で、少し状況が異なりますが、同性婚の合法化と子を持つ権利とは、少し論点がずれてくるため、逆に問題が起きやすくなるという意見もあります。ただし、代理出産の問題は、異性との婚姻夫婦でもあることですので、同性婚のテーマとは別で考えるべきだという気もします。

LGBTの差別問題

差別というと人種の差別や性差別などがありますが、同性愛者への差別も近年よくテーマに上がります。同性愛者の人が突然襲われたり、暴言を吐かれたりという事件はスイスでも起きています。一方で、スイスの社会では、多くの都市部では比較的好意的に受け取られていて、社会でも活躍している人が多く、TVなどメディアで仕事をする有名人もカミングアウトを行っていて、十分受け入れられている印象があります。

その結果が、冒頭の世論調査の数字に表れているのだと思いますが、実際に細かな権利の問題となると、そこまで考えて賛成している人も少ないように思います。移民への差別もそうですが、身近にそうした人がいないとわからないように、法的な差別と実社会での差別はまた違ってきます。

同性婚を合法化して、法律的な差別を無くしても、実際に生活していく上での差別は残るということになります。外国人として暮らしている人はわかりますが、実際に人種差別された時の気持ちは、差別をされない立場の人にはなかなか伝わりにくいものです。それと同じように、LGBTの差別の辛さもその立場の人にしかわかりません。

それでも、国民投票の議題となることで、権利の平等、差別の根絶に1歩づつ近づいていくことが出来るのではないかと思います。

 

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