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コロナウィルスによる、事業者・経営者の苦悩

見通しが立てづらいのが一番の悩み

今年は全ての人が、コロナウィルスに翻弄されて、生活も変わってしまった人も多くいます。会社員でさえ、ホームオフィスになったり、解雇されたり、就職活動が難しくなったりと大変な時期になってしまいました。それも世界的な規模です。

中でも、政府の感染対策に翻弄され、お店を営む事業主や旅行業界の経営者は、かなりの打撃を受けています。自分の周りにいる経営者の方々も一様に大変な年になっています。なかなかロックダウンをしないスイス政府に、いっそのことドイツのようにロックダウンしてくれればまだ良いのに、ズルズルと規制がかかりながらの営業ほど辛いものはないということです。

地域のあるレストランでは、買い込んでいた食材を近所の人たちに売りに出していたりして、生物や野菜、使いきれない食材をせめて捨てたくないという気持ちがあります。それでも処分しなければいけない食材が出るでしょう。

固定費が重くのしかかる

そして、収入が止まってしまっても、家賃などの固定費はかかり、経営を圧迫します。政府からの保証も少ないなど、非常に厳しい状況にあり、体力が持たないと早々に店じまいした人も居ます。どこでどう判断をするか、非常に悩むところでしょう。

業種によっては、競合禁止条約のような規定に抵触する場合は、会社をクローズさせた場合に、その同じ経営者が、2〜3年は、同じ業種の事業経営をしてはいけないという取り決めがあることも。その辺も含め、考慮しないと、会社も簡単にクローズできません。コロナがおさまってから、また同じ事業をしようと思ってもしばらく出来ない場合もあるわけです。

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ある会社のフィロソフィー(哲学)に驚き

ある会社もこのコロナの影響を受けて、非常に厳しい状況に立たされました。知人が働いていたので、詳しく話を聞けたのですが、この会社でも経営が悪化し、リストラをすることになりました。通常は、人事と各支店や部署のマネージャーなど管理職の人が決めるわけですが、この会社では、スタッフが全体ミーティングでお互い誰が残るべきかを話し合い、そして、もう一度自分のいるポジションに応募をし、なぜこの仕事がしたいかを自己アピールした結果、皆で残るべき人を決めるという、ちょっとおかしな手法をとりました。

この話は、実はスイスの一部メディアでも取り上げられたので、読んだ人もいるかもしれません。少し特殊なフィロソフィーを持った会社ではあり想像はできますが、やはりそうした経営陣のやり方に疑問を感じます。

誰が会社に残るかの決定は、通常の社員がする仕事ではありません。管理職が社員に自分たちで決めろと丸投げしているようなものです。しかも、そんなことをすれば、チームの雰囲気は一気に悪くなります。誰もが会社に残りたい一心で、自己アピールしながら、他のスタッフの悪口まで飛び出す始末。私は誰々よりもこの点が優れているから、私が残るべきだと言った人もいるそうで、これでは人間関係も崩れてしまいます。

しかも、事前に根回ししたスタッフもいて、マネージャーが、全体ミーティング前に、「○○さんは、家族がいて子供もまだ小さく、家のローンもあるので、このリストラ候補からは免除します。」という発表が。あまりにも不公平な理由で皆唖然としたそうです。その人がどうしても仕事上必要なので、リストラ候補からは外すというならまだわかりますが、家族や家のローンの有無などは、他のスタッフだってあるわけです。皆生活がかかっているのは同じです。

コロナが収束して、また仕事が忙しくなった場合に、解雇したスタッフを呼び戻すことがありますが、このやり方ではおそらく解雇された人は、誰も戻ってこないでしょう。非常に奇妙な決定方法に驚きました。

徐々に溜まるフラストレーション

こうした状況に、誰もがフラストレーションを溜め込んでいて、人には会えない、マスクは着用、仕事もずっとホームオフィスだと、気持ちが悪い方に向きがちです。実際、大人だけではなく、子供達もこの状況がストレスになり、精神科の診療が増えているそうです。自由を制限されてしまうと、こんなにも辛いのかと思った人も多いわけですが、あるスイス人の友人がこんなことを言っていました。

スイスは歴史的な背景においても、危機らしい危機をまともには受けて来なかったので、周辺を大国に囲まれた小国としては非常にうまく、恵まれた環境で発展してきたと思う。第2次大戦でも、国境際の地域は爆弾が落ちたが、次はいよいよスイスに侵攻されるというところで戦争が終わったので、ドイツや他国に比べたら被害は少なかったし、割と早く立て直しをしたわけで、最悪の自体は避けたと言ってもいい。そうした国の背景の違いは有事に出る。

この友人は、だから、こうして政府からの規制で自由を奪われると、不満が出るし国がまとまりにくい。それを見越して、スイス政府はロックダウンを避けているような気がするといいます。もちろん今の世代は、日本でも戦争を知らない世代。しかし、国としてそうした背景があるのとないのとでは、大きく違うと言うわけです。

しかし、一方では、こうした有事には、自分たちがどれだけ恵まれた生活をしているかを実感する時でもあり、わがままを言う人ばかりではないことも事実。そこはスイスのいいところで、慈悲団体や寄付の類の募金活動などは、どの国よりも成功したくさんのお金が集まります。

ルールには従うスイス人ですが、強制されることが嫌いなのも事実。ワクチンの接種においても、かなり警戒していますし、無料の期間に接種しない人は、有料になると言う話も出てきています。

とにかく、いろいろな価値観や生活環境が変わってしまった1年ですが、今年もあと半月。2021年はなんとか危機を脱し、コロナの感染拡大が収まってほしいと思います。なんでもない通常の生活が一番取り戻したいものであることは、間違いないでしょう。

 

 

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